伊勢丹新宿店「ザ・ステージ」を占拠!?“目利き家”安藤夏樹を知っているか?Part.2〜ギャラリスト編〜

photo: Norio Kidera / text & edit: Yu-ka Matsumoto

「散財王に俺はなる!」という座右の銘を掲げ、稼いだマネーを“蒐集”と称して世のため、人のため?いや、自分のために乱費する男、安藤夏樹。あるときは編集者、あるときはギャラリスト、またあるときはコレクターと、いくつもの肩書きを持つ謎多き人物だ。そんな彼が2026年1月21日より、個人としては例がない伊勢丹新宿店の本館1F「ザ・ステージ」を舞台に、コレクターズアイテムを展示・販売するビッグイベント『プレコグのおもちゃ箱』を開催。NIGO®️でもなく、藤原ヒロシでもなく、前澤友作でもない、世の中的には無名と言ってもいい安藤夏樹が、伊勢丹の顔でもある「ザ・ステージ」をジャックする。彼はいったい何者?そんな安藤を形成する3つの要素のひとつである「編集者」編に続き、「ギャラリスト」としての活動を紹介しよう。

編集者人生の分岐点となった雑誌『MOMENTUM』では、歌舞伎俳優の松本幸四郎と趣味の木彫り熊を共演させるなど、ほかに無いユニークな作りで文化横断型の誌面をいい意味で私物化。そこで人脈という財産を手に入れ、今の活動にもいかされているという。その後、2016年の独立を機に「プレコグ・スタヂオ」を設立。そして、2023年には「プレコグ・ギャラリー」をスタートさせるわけなのだが、そのギャラリーを構えることになった経緯にもなかなか彼らしいエピソードがあった。

木彫りの熊
安藤夏樹の手元

「ここでもやはり、流れに身を任せることになるんですが、そもそものきっかけは、木彫り熊作家の高野夕輝さんがアートフェアへの出展に興味を持たれていたことからでした。

んじゃ、やってみようかなと。その時、僕の中ではギャラリースペースなんかいらないと思ってたんです。マルジェラだって、駐車場とかでショーやってるじゃないですか。あのノリで(笑)。ところが、アートフェアの事務局の人を紹介してもらって会いにいったら、なんと箱がないとダメだよって言われて諦めかけていたんです。

でも熱意だけはありましたから、ひたすらこれまでに開催したアートイベントのこととかをエントリーシートに書きまくって提出しました。そしたら運良く出られることに。ただ、そうなると逆にスペースを構える必要が出てくるわけです。それが2023年9月だったんですけど、そこから物件を探して内装やって。アートフェアの数週間前に最初の個展を開催して、本格的なギャラリー活動がはじまりました。

その時の取り扱いは、高野さんと、編集者時代に仲良くしていただいた鬼海弘雄さん。あとは物故作家の木彫り熊だけでした。当然ですけどそれだけだとギャラリースペースを維持できないんですよ。そこで書籍の装画でお世話になっていた画家の坂巻弓華さんや、ファンだった金工家の長谷川竹次郎さん、建築家の藤森照信さんにもお願いにあがって。みなさん快く引き受けてくれました。今ではようやく2ヶ月に一回個展できる体制が整ったという感じです。

アートフェアが決まったときに理事の人が、木彫り熊ってジャンルが、これまでアートにも工芸にもなかったので面白いんじゃないかって言ってくれて、少し自信が持てました」。

そしていざ、蓋を開けてみたら、アートフェア会期の初日にプレコグブースの木彫り熊目掛けて我先にとダッシュするという信じられない光景が。2024年“熊の衝撃”。と語り継がれるかはわからないが、運営サイドの期待をいい意味で裏切る鮮烈なギャラリストデビューを飾ることとなった。

「本当に、木彫り熊には救われてますね。僕は、北海道の木彫り熊の文化と情報を発信する『東京903会』を主宰しています。もちろんブームにしたい思いはありましたが、元々は木彫り熊が捨てられないように救済の意味も込めてInstagramを始めるところからスタートしたんです。イベント事も含めて、もっと木彫り熊シーンを盛り上げたいって思った時に、古物だけだと限界を感じまして。やっぱりシーンが生きてないとダメだろうな、意味がないだろうなって。だから現代作家探しは必須でしたし、急務だったんですよ。それで偶然出会ったのが高野夕輝さんなんです。

偶然というか、まだ『熊彫図鑑』も出ていないときに僕の活動を知って会いに来てくれて、熊を見せてくれたんですよ。最初は粗削りな状態でしたけど、何か感じるものがあって。だんだんと仕上がっていく様子を見て高野さんにイベントで熊を販売させて欲しいと持ちかけたんです。それが〈CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店〉で行った第一回目の『東京で熊さんかい?by東京903会』でした。

実は、そのイベントでお客さんだったイラストレーター高旗将雄さんが、あるとき自分で彫った熊をインスタに上げてて、それがめちゃくちゃ可愛いかった。そこで、二回目のクラスカでのイベントから販売しましょうよ、って流れになったんです。高野さんも高旗さんも未来を見ているっていうか、常に進化への努力を惜しまない。そこら辺の考え方がやっぱりアーティストなんですよね。尊敬してます。

僕は今でも個人的に二人の作品を欲しいなって思うんです。いや、二人だけじゃなくて扱っている作家すべてがそうです。自分のギャラリー以外で買えるチャンスがあるなら買いたい。ギャラリストとして所属作家を育てていくとか、、そんな偉そうなもんじゃなくて、自分が欲しいなと思う人にはずっと作り続けてもらいたいし、ずっと作っていてもらうためには、ある程度評価をつけていかないといけないとは思っています。

そのためには国内だけでなくグローバルな視点で認められる必要がある。僕自身がもっと頑張らないといけないですね」

現在、プレコグギャラリーでは、高野夕輝、高旗将雄、坂巻弓華、内田鋼一、長谷川竹次郎、鬼海弘雄(物故)らの作品を扱っている。

昨年末に行った〈GALLERY CLASKA〉でのイベント『ゆく熊くる熊 Final by 東京903会』では、藤原ヒロシ氏が来場。Instagramに会場の木彫り熊をアップしていることで話題になった。

「まだまだ新しい出会いがこれからもあると思っています。そこから何か違ったアプローチの表現が生まれるかもしれません。いろんなきっかけを模索して、これまで知ってもらえる機会がなかった方々にも、木彫り熊の魅力が広がっていくといいですね」。

伊勢丹新宿店「ザ・ステージ」を占拠!?“目利き家”安藤夏樹を知っているか?

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