流行に関係なく自分たちが楽しめる空間
——学生時代はファッションデザインを学ばれていましたが、どんなカルチャーに興味があったのでしょうか。
ファッションだけでなく美術分野の基礎から学びました。複雑でカラフルなものよりも、落ち着きがありつつも遊び心のあるものを好む傾向があったため、日本のブランドに自然と惹かれることが多かったと思います。
特に〈イッセイミヤケ〉の全ラインに関心を持っていました。それは今でもあまり変わらないかもしれません。
その他のブランドだと、〈メゾン マルジェラ〉が好き。ファッション専攻ではありましたが、洋服だけをデザインするというよりは、ファッションショーを行ったり、写真で世界観を見せたりと様々なメディアを使ってメッセージを発信するところに興味を持っていました。
ファッション雑誌もひと通りチェックしていましたし、ライフスタイル周りのデザインにも興味があったりと、幅広く様々なクリエイティブに興味がありました。今でも好奇心は旺盛です。
——卒業後に様々な仕事を経験した後にヨーロッパに行かれたそうですね。その経緯を教えてください。
アイドルグループや歌手の衣装制作やスタイリング、アイウェアブランド、日本食レストランでも働きました。
ある時、友人のフォトグラファー、キム・ヒジュンから写真家のアシスタントを終えて独立するので一緒にヨーロッパに行かないか、という誘いを受けました。29歳の時です。
最初は3ヵ月で帰ってくる予定だったんですが、ヒジュンが現地で撮影の仕事を受け、僕はそのアシスタントをしたりして。旅行というよりは暮らしながら、結局1年くらい滞在することになりました(笑)。
仕事もしましたが、各地のギャラリーやショップなどを巡ったり。特にパリは一番長く暮らした場所ですが、毎月エリアを変えてツーリストが行かないような場所を散歩したりしていました。
この1年間で、いいことも悪いことも含めていろんな経験をして、人間的にすごく成長できました。そして、どこにいるかよりも、誰と一緒にいるかが大事なんだと思いました。
——旅先で、映像編集に挑戦したいという気持ちが芽生えたそうですね。
はい。帰国後に、最初は写真のレタッチなどを学んでいたんですが、実際にやってみたら映像の方が向いていることに気づいたんです。
主に、ファッション関係の広告や動画、アーティストのアルバム関連の映像などを手がけていました。
映像の一瞬のカットを選び、シーンを効果的に並べてつないでいく作業では、ファッションデザインで学んだ、体の動き、服の動き、背景の雰囲気などを読み取る感覚が大きく役に立ちました。
——映像のお仕事もたくさんされていた時期に、2022年、厚岩洞(フアムドン)に〈COMFORT SEOUL〉を建てます。どんな経緯だったんですか?
キム・ヒジュンや仲間たちと一緒に住める建物を建てたいと思い、あちこち物件を見に行っていたんです。聖水洞(ソンスドン)とかも見ていたんですが、ちょっとうるさすぎて(笑)。厚岩洞のソウルの街が一望できる高台がいいなと。
建物の基本的なデザインは僕らがしていますが、専門的な箇所は、경계없는작업실(BOUNDLESS)が担当しています。
建築自体も話題となり、建築賞を2回受賞しました。最初は自分たちが住む場所として設計していましたが、現実的には様々な問題があって、住居ではなく、ギフトショップやカフェ、ギャラリーが併設された僕たちの遊び場のような空間が出来上がりました。

——オープンから丸3年、流行の変化が激しいソウルで、今後どのような展開をされていく予定ですか?
韓国は「빨리빨리(パルリパルリ=速く速く)文化」といわれていますが、僕自身の性格はそんなに急ぐことが好きじゃない。
でも、型にハマらない新しいことをやっていきたいという気持ちは強い。一番大事なのは、自分とヒジュンが面白いと思うことをやり続けること。なので、周囲の流行には流されず、楽しみながら、少しずつ変わっていく場所にできたらと思います。
Lee Taekyunが選ぶ、今の韓国を知る映画
韓国映画の巨匠パク・チャヌクの最新作。現代社会に生きる誰もが直面し得る突然の解雇という現実を独自の視点で描き出す。主人公のマンス役にイ・ビョンホン、妻役には『愛の不時着』のソン・イェジンというタッグ。脇を固めるのもイ・ソンミンやヨム・ヘランらベテラン揃いだ。3月6日、全国公開。