松田龍平と沖田修一が語る、前代未聞の探偵ドラマができるまで

1月9日より、テレビ朝日系列の金曜ナイトドラマ枠で放送がスタートしたのが『探偵さん、リュック開いてますよ』。とある温泉街を舞台に、探偵にして発明家でもあるマイペースな主人公が、毎話舞い込んでくるヘンテコな依頼に対して、奇想天外な発明品を使って解決を目指したり、時に諦めたりする(?)、極めてユルいミステリードラマだ。本作に企画から携わった主演の松田龍平さんと、監督を務めた沖田修一さんが、一連の制作を振り返った。

photo: Go Tanabe / hair & make-up: Motoko Suga / text: Emi Fukushima / edit: Yu-ka Matsumoto

松田龍平:今回、沖田さんとご一緒できたのは、僕にとっては“棚ボタ”でした(笑)。

沖田修一:いやいや、そんな!恐れ多いですよ(笑)。

松田:まっさらな状態から企画を立ち上げるお話をいただいて、ありがたい半面、難しさや大変さも感じていたんです。そうしたなかで、僕の持っていたざっくりしたイメージを沖田さんがちゃんと受け止めてくださったことで、歯車がうまく噛み合い始めた感覚です。

沖田:そもそもどんな経緯で声をかけてくださったんですか?

松田:金曜ナイトドラマがミステリー枠だったことから、探偵モノが良いかなと。事件を通じていろんな人と関わりが持てる職業なので、話を広げやすいなと思って。そんな構想の段階で、たまたま沖田さんも実は探偵モノに興味があるという話を耳にして。

これまでに2つの作品でご一緒しているし、緻密に人間の感情を描きながらも、フィクションならではの物語の飛ばし方をする作風がすごく好きなので、これはぜひ、とお声がけして。ご一緒できて本当に良かったです。

沖田:こちらこそ、ありがとうございます。以前から周囲のスタッフに「拳銃が出てくるような作品を撮ってみたら?」との助言をもらっていたこともあり、何となく探偵や刑事モノに興味を持っていました。結果的には、今回のドラマに拳銃はあまり出てこないんですが。

松田:そうですね、僕がお願いしたのは頑張らない探偵(笑)。犯人を追いかけたり、アクションしたりはせず、サクッと事件を解決して、あとは近所をぶらぶら散歩して周囲の人たちと世間話したりするようなユルい主人公像がいいなと。

でも、それを物語として形にするにはもう一歩何か仕掛けがあるといいのかなと思い、発明家という設定を加えました。自らの発明品を使って事件を解決することで、ハードボイルドな部分を回避できたらいいなと。そのアイデアを真面目に沖田さんに投げたら、意外にも感触が良かったんです。

沖田:イメージしていた方向性とは違ったけれど、松田さんらしいし、それはそれで面白くなりそうだなと思いました。

松田:僕自身が楽をして事件を解決したいというのもたしかにありまして(笑)。でも、何でもがむしゃらにやれば面白くなるわけでもなくて、ベース無理をしないなかで熱いところを見出せたら面白いんじゃないかなという、思いを込めました。あとは父の松田優作が、代表作の『探偵物語』でハードボイルドな探偵の役を演じていたので、それとは別物にしたい思いも漠然とはありましたね。

松田龍平と沖田修一

次第に膨らんでいった、発明品ありきの突飛な展開

松田:ざっくりしたアイデアをお伝えしたあと、沖田さんが最初に「探偵さん、リュック開いてますよ」というタイトル案を挙げてくださいましたよね。その時点でもう、さすがだなと思いましたね。

沖田:探偵なのに注意力散漫で、そもそも背中を取られている。ギャップを感じさせるタイトルが面白いなと思ってつけたものです。

松田:まさにイメージ通りで嬉しかったですし、沖田さんに委ねれば間違いないという安心感も一層強くなりました。だから、脚本もできるだけお任せしたいなと。

沖田:最初に松田さんから「とことん突き抜けた沖田さんが観たい!」というニュアンスの言葉をかけられていたので、それには全力で応えないといけないなと……。

松田:僕自身は、発明したジェットパックで空を飛んで犯人を捕まえるような突飛な演出が少しでも入ったら面白そうだな、くらいに考えていたんですが、初稿を読んでみたら、想像以上に奇想天外な発明品を起点にしたファンタジーに飛躍していて(笑)。もうこれは僕が余計な口を挟まず、いけるところまでいってほしいなと。

沖田:発明というモチーフがあるとつい遊びすぎてしまって。ただ、もちろん物語のなかでは、探偵として活躍する松田さんもしっかり見せたい。ブラッシュアップする過程で多少案配は調整しました。

松田:面白いなと思う一方で、本当に形になるのだろうか?という一抹の不安は持ちつつも(笑)、演じる上で作品の世界観に入り込むためには何が必要かということだけを考えていましたね。

唯一お願いしたことは、主人公のバックボーンについての裏付けを見せることくらいでしょうか。何でもありな世界観のなかでも、アメリカ帰りだったり、かつては人の悪意や怒りをエネルギーに変える研究で成功していた天才だったりすることにリアリティがあった方が観ていてより楽しいものになるだろうなと。

あまりわかりやすくなりすぎないようにしたいなとは思いつつも、ドラマである以上はある程度のわかりやすさも大事。そのバランスは、お互いにやりとりさせてもらいましたよね。

松田龍平

発明の手作り感を引き立たせた、アナログな撮影

松田:撮影に入ってからも引き続き、本当に形になるんだろうか、という思いは持ち続けていました(笑)。台本上でグリーンバックや特殊効果があると書かれているシーンについて、現場に入ってから沖田さんに詳しく聞いてみても、「ちょっと僕もどうなるかわかんないです」と返ってきて。ちょっとしたパニックになった時もありました(笑)。

沖田:いやぁ、やったことないことがいっぱいありました!発明品の“手作り感”を引き立たせるために昔の特撮っぽい雰囲気を出したくて、CGはほとんど使わずに撮影や合成を進めたんです。爆破のシーンもアナログで。毎回、「どうなるんだろう」と探りながら向き合っていました。美術部は相当大変だったと思いますけど、どこか懐かしい匂いのする映像にもなったと思います。

松田:光石研さん然り、大倉孝二さん然り、現場に来る役者さんがみんな一言目に、「何なの?このドラマ!」って僕に聞いてくるんですよ。「意味がわからないんだけど」って(笑)。それに対して「そのままで大丈夫だと思います」と落ち着かせて(笑)。

沖田:役者陣のケアまでしてくださって……!

松田:結局は、撮影が始まったらみんな自然とこの世界に馴染んで、最後は楽しかったと言って帰ってくれて安心してました。

沖田:撮影のスケジュールもハードだったから、役者もスタッフもみんな、遊び疲れた子供のような状態になっていましたね。

沖田修一

再タッグは、バリバリ働くエリート社長役?

松田:沖田さんとは映画『モヒカン故郷に帰る』、ドラマ『0.5の男』に続いてお仕事をするのが3回目でしたけど、やっぱりものづくりへの信念を随所に感じる方だなと。今回もすごく楽しかったです。

沖田:松田さんと仕事をすると毎回、良い意味で最終的に共同作業になるところが面白いんですよね。それは、松田さんに常に絶対的な正直さがあって、今回の探偵役ではないけれど無理をせず、あくまで自分自身の声を聞きながら役者の仕事に向き合っているからなんだろうなと。毎作題材は全然違うし、その都度チャレンジがあると思うんですが、監督/俳優というそれぞれの領分を超えて、「どうする?」と膝を突き合わせられる。そこに楽しさを感じます。

松田:ありがとうございます。それにしても、よく考えてみれば、ユルい役ばかりでご一緒していますよね。

沖田:売れないバンドマン、引きこもり……確かに(笑)。

松田:となると、次は沖田さんの作品で、エリート社長をやりたいですね。今回は初めてきちんと働いている役ができたので(笑)、次はさらにバリバリ働きたいです。

沖田:ぜひ、次は名実ともにカッコいい役でお願いします。

金曜ナイトドラマ『探偵さん、リュック開いてますよ』
毎週金曜よる11時15分〜(一部地域を除く)、テレビ朝日系列で放送中。失踪した父から探偵稼業を引き継いだ一ノ瀬洋輔は、傍らで発明品の開発にも勤しむ。彼が探偵事務所兼発明ラボ兼住居とする閉業した温泉旅館には、今日も個性豊かな依頼人たちが足を運ぶ──。出演:松田龍平、髙橋ひかる、大倉孝二、水澤紳吾、片山友希/原田美枝子・光石研

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