ブルータス時計ブランド学 Vol.83〈アイクポッド〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、この1年間に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第83回は〈アイクポッド〉。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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ポップ&スタイリッシュな腕時計を身近な価格で

創業者にはプロダクトデザイン界のスター、マーク・ニューソンが名を連ねる。〈アイクポッド〉は、ニューソンらしい有機的な曲面で織り成すフォルムと、鮮やかな差し色によるポップな外観に、COSC認定クロノメーター取得の高精度な機械式ムーブメントを搭載。その意外性で一躍時計界の寵児となった。しかし製作にはあまりにコストが嵩み、創設から12年を経た2006年に休眠状態に陥ってしまう。

そんなブランドを救ったのは、アートコレクターのアダム・リンデマン。彼はニューソンの創造性をより重要視し、またアーティストKAWSとのコラボといった新機軸を打ち出すことで再生を図った。だがこうしたニューラグジュリーへの移行は熱烈なファンを生んだ一方、大衆から支持を得られず、2012年に再び休眠状態となり、ニューソンもブランドから去ることとなった。

そして2017年、長年のファンであった実業家クリスチャン-ルイ・コルが、さらなる復活劇を仕掛けた。複数の時計ブランドで手腕を振るってきた彼は、デザイン性に重点を置き、製造を中国や台湾などで行うことで一気に低価格路線へと転換。翌年クラウドファンディングで出資者を募り、〈アイクポッド〉は新たなスタートを切ったのである。

ケースは、ニューソン・デザインを踏襲。コルの人脈により名だたる時計メゾンで才能を発揮してきたデザイナーを招聘し、ダイヤルデザインを委ねた。当初はクォーツ式のみの展開だったが、20年から機械式もラインナップ。これも〈シチズン〉傘下のMIYOTA製量産ムーブメントを採用するなどして価格を抑えている。新生〈アイクポッド〉は、ニューソンのDNAを継ぐデザインに特化することで、新たな道筋を開いた。

【Signature:名作】シーポッド ジャック

ブランドの原点に回帰したダイバーズウォッチ

ニューソンが手掛けたコロリとしたUFO型ケースに、逆回転防止ベゼルを統合。そしてダイヤルのデザインは、ブランドの初作であるダイバーズウォッチ「シースラッグ」からの引用・再解釈である。ビビッドな色使いも相まって、ブランドのDNAを色濃く受け継いだ一本。

46mmという大型ケースも〈アイクポッド〉が先駆けとなった一つだが、エルゴノミクスに基づいたサイドの曲面とラグのないケース一体型のストラップの恩恵で、装着感に優れる。いかにもポップな見た目だが、防水性能は200mとタフ。本格的なダイビングにもしっかりと対応してくれる。

径46mm、自動巻き、SSケース。297,000円。

【New:新作】ヘミポッド 2025

ヘリテージを受け継ぎ、進化したアイコン


1997年に誕生した、元祖UFO型ケースのクロノグラフのスタイルと名を現代に継承。3時位置に日付表示のインダイヤルを配した4カウンターとすることで、シンメトリーなダイヤルデザインを創出した。

シルバー×ブラックのモノトーン仕立ての中で、ブルーが爽やかなアクセントを添え、かつ視認性を高めている。ケースはオリジナルにならい44mmと大ぶりだが、チタン製だから装着感は実に軽快。ブランドのレジェンドモデルを復刻するに留まらず、時代に合わせてアップデイトしてみせた。

径44mm、自動巻き、チタンケース。1,210,000円。

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