俳優が憧れた俳優。大下ヒロトが語る町田町蔵と、その演技について

大下ヒロトが語る、長い日本映画の歴史の中で自らが憧れた俳優・町田町蔵と、その演技について。演じることに向き合いながら追いかけ続ける、心に残る芝居とは。

photo: Jun Nakagawa / grooming: Yoshikazu Miyamoto / text: Ryota Mukai

いいお芝居のヒントは、街にあるかもしれない

映画を観る時は演技のことを考えないで観たい。そう語るのは、『あみこ』でデビュー後、映画、ドラマ、舞台とさまざまな作品に出演する俳優の大下ヒロトさん。それでも芝居が気になって、後で観返した映画の中の一つに『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』がある。

「池松壮亮さんは、落ち着きがなく、おしゃべりが止まらない青年という役柄。工事現場の柱に掴(つか)まって、ぐるぐる回転しながら延々仕事仲間に話しかけているんです。“なんだこの人は?”という感じで、常に極端な言動ばかりをする。でも、映画の世界では確かにこの青年はいる、生きているという感じがする。“こういう人いるよね”と誰もが思うステレオタイプな人物像ではなく、です」

そのリアルな存在感に魅せられた大下さんが、もう一つ忘れられないと話す演技が、ハードSFの名作の中にもある。荒廃した近未来が舞台の『爆裂都市 BURST CITY』だ。

「“これは暴動の映画ではない。映画の暴動である。”というキャッチコピーも深く頷ける、強烈な作品です。実際、劇中には頬を膨らませたり、ずっと小刻みに動いていたり、画面の隅々までインパクトあるキャラクターが登場します。中でも印象的なのは町田町蔵(後の町田康)さん。

言葉を持たない役柄で、口を開けば“あ゛あ゛!”と叫ぶだけだし、カッと開いた目はどこに視線が向いているのかわからない。動物のように肉を食らう姿は忘れられません。この演技、どうやって作り上げたのか本当にわからない。でも、パンキッシュな作品の世界観とぴったり一致しているからか、本当に存在するように感じられるんです」

俳優・大下ヒロト

しかし、演技がただアピールするだけの、ただ激しいものであればいいわけではない。大下さんの俳優業への向き合い方からそれが窺える。

「映画を観ながら“いい芝居だなあ”と思うのは、ある意味目立ってしまっているってことだと思うんです。そうではなく、むしろ、ただ存在しているだけで成立しているのが理想的。台本を読む時は、映画の世界に住む人間の言葉にするために、どうしたらいいかを意識しています。今後情報解禁になる、ある作品では“抑えめに演じてほしい”と監督から助言を受けて、現場で演技を作り上げました。まだまだ未熟です」

そんな大下さんにとって、映画を観たり、演技について考えたりすることと同じくらい、大切なことがもう一つあるという。

「いろんな人と直接会うことにも、学びがあると思っています。想像もつかないような変わった人やすごい人が、街にはたくさんいますから。延々しゃべり続ける人の話を聞きながら、会話のリズムを感じるのも一つの経験。そこにあるリアリティを体感することが、演技の土台になっていればいいなと思います」

町田町蔵の一本

映画『爆裂都市 BURST CITY』
『爆裂都市 BURST CITY』©東映
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