画面を通して伝わってくる感情表現のすごみ
2013年に俳優デビューし、まだ20代でありながら日本映画界に欠かせない存在となった俳優、広瀬すず。そんな彼女の演技を小学生の頃に初めて観て心を掴(つか)まれ、時を経て、このたび俳優に初めて挑戦したフレッシュな新人がいる。少女たちの繊細な感情をすくい取った映画『白の花実』で、主演の杏菜役に抜擢された美絽さんだ。
「私が広瀬すずさんの出ている映画を初めて観たのは『ちはやふる』です。小学5年生の時に三部作の最後の作品が公開されて、楽しみに映画館へ観に行ったのを覚えています。それから出演作を意識して追いかけるようになって……。この仕事を始める前から一観客として大好きでしたが、こんなふうになれたらいいなと、今は憧れを抱いています」
そう語る美絽さんが中でも印象に残っているのは『流浪の月』での演技だという。広瀬さんは、世間的には“誘拐犯”とされる男性・文(松坂桃李)に出会って救われ、心を通じ合わせていく更紗という役を演じている。
この作品での演技について「すべての感情が出ているじゃないですか……」と初めて観た時の感動を蘇らせる美絽さん。たしかに、逃げ場のない境遇の中で、怒りも悲しみも愛情も、すべて引き受けることを余儀なくされる役柄だ。
「一番心に残っているのは、恋人から暴力を受けて傷を抱えた更紗が、文に会いに行く場面。文と一緒に過ごした子供の頃の面影を感じさせながら、大人の表情も見せていて、更紗の過去と現在が入り混じっていた。広瀬さんは、眉毛の動き一つとってもすごくて。些細な表情の違いから、感情が伝わってくるんです」

初芝居で実感した、俳優という仕事の魅力
映画は好きでよく観ていたが、美絽さんにとって、自らが俳優として演技に挑戦することには大きな壁があった。「小学生の頃の学芸会では、役のないナレーションに逃げて……」とも吐露するほど。しかし『白の花実』では、大事な友を亡くし、家族にもうまく自分の気持ちを言えない杏菜という役を堂々と演じ切った。
「演じてみて、やっぱり感情の出し方は難しかったです。心の中で表現したい感情をイメージしているだけでは、思っているよりも画面に映らないことがわかったりして。でも、坂本悠花里監督は私が思うように自由に演じさせてくれたので、最初は掴みどころがなかった杏菜を徐々に理解していく過程で、“楽しい”という感情が芽生えた。
もっとこうすればよかったとか、悔しさみたいなものはもちろんあるんですけど、以前までの演技に対する苦手意識はなくなっていました。自分ではない人の人生を体験するのは、俳優にしかできない。今は、もっといろんな役に挑戦してみたいと思っています」