「誰もが主人公になれる」。主演俳優・シム・ウンギョンが観た、映画『旅と日々』の美しさ

8月に開催された『ロカルノ国際映画祭』のインターナショナル・コンペティション部門で、最高賞である金豹賞を受賞したのが、今最も新作が待たれる映画監督の一人、三宅唱監督作の『旅と日々』。監督、キャストの証言を手がかりに、映画の持つ美しさを探る。

photo: Hiroshi Nakamura / text: Keisuke Kagiwada

主人公である李を演じたシム・ウンギョンは、本作を最初に観た時、言葉を失ったという。

「とても不思議で今まで観たことがない映画だったからかもしれません。2回目に観た時ですかね、ようやく何か言えそうだと思ったのは。そこで感じたのは、“これは体験の映画なんだな”ということ。私が演じた李を通して、誰もが主人公になれる。そこが美しいなと」

ストーリーがないと、どうにもならないです

(李)
「ストーリーがないと、どうにもならないです」(李)
シムが美しいシーンとして挙げた、李がえっちらおっちら雪道を歩くシーン。冬編には、サイレント映画的なシーンがほかにもあり、例えば、吹雪に飛ばされた帽子を李が慌てて追いかけるところなど、チャップリンの喜劇を観ているようなおかしみがある。

中でも印象に残ったのは、演じるうえでシムがとても重視したという李の“動き”の一つだ。

「影響を受けたのはバスター・キートンやチャップリンをはじめとするサイレント映画でした。三宅監督と相談して繊細に調整しながら、“動き”でどれだけのことが表現できるのか挑戦してみることにしたんです。その一つが、李が雪道を歩くあるシーンです。もともと歩道じゃないから道が悪くて、歩き方がちょっと変になってしまっているんですね。李はこれからどう生きたらいいのか悩みながら、旅をしているんですが、その変な“動き”には、どんなに不器用でも、自分なりに頑張って生きていきましょうっていう、三宅監督なりの美しいメッセージが込められているんじゃないかなと、私は受け取りました」

『旅と日々』(89分/'25)監督/三宅 唱
東京で活動する韓国人脚本家の李(シム・ウンギョン)が、原稿用紙に文字を書き綴る姿から映画は幕を開ける。彼女が書く物語の舞台は、海に囲まれた夏の島だ。母の故郷であるこの島でぼーっとしていた夏男(髙田万作)は、浜辺で渚(河合優実)という謎めいた女と知り合う。再会を約束して別れた2人は翌日、大雨が降り注ぐ中、危うげな海水浴を楽しむ……。映画化されたこの物語をスクリーンで観ながら、李が痛感するのは自分の才能のなさだ。スランプを自覚し、雪の積もる山村へ旅に出る李。べん造(堤真一)という孤独な男が営む古びた宿に泊まることになった彼女は、彼の家族をめぐる話に耳を傾ける。そんなある夜、べん造はニシキゴイのいる池を見せるため、李を雪原へと連れ出すが……。

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