斉藤壮馬の「ただいま、ゼロ年代。」第43回 The Fratellis『 Costello Music』

声優・斉藤壮馬が、10代のころに耽溺していたカルチャーについて偏愛的に語ります。

photo: Kenta Aminaka / hair&make: Mami Eguchi / text: Soma Saito

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The Fratellis『Costello Music』

斉藤壮馬

懲りもせずロックンロール・リバイバルの話である。どの時代もそうだが、あのころも様々な個性を持つ音楽家が現れ、そして消えていった。

きらめくようなメロディセンスを持つソングライターもたくさんいたけれど、アルバムを2枚出せればまだいい方で、活動がうまくいかずに続報の途絶えたバンドは数知れない。

そんな中、休止期間を挟みつつも、常にハイクオリティなポップロックソングを生み出しつづけているバンドがいる。

The Fratellis。今回は彼らについて語っていきたい。

スコットランドはグラスゴーにて結成された彼らは、メンバー全員の姓に「フラテリ」を冠するスリーピースバンドだ。

といっても彼らは実際に家族や兄弟であるわけではない。古くはパンクバンド・Ramonesなどと同様に、血縁関係はないが「ファミリー」として活動しているわけである。

余談だが、ラモーンズの「Blitzkrieg Bop」は何回聴いたかわからないくらい素晴らしい名曲なので、こちらもぜひ聴いていただきたい。ヘイ!ホー!レッツゴー!

ピザを食べる斉藤壮馬

それはさておきフラテリスの話に戻ろう。彼らの1stアルバム『Costello Music』が発売されたのは2006年。すでにシングルが各所で話題になっていたが、このアルバムが世界的にヒットし、一躍有名バンドの仲間入りを果たした。

日本ではM2「Flathead」(邦題:気取りやフラッツ)がiPodのCMソングにもなっていたので、もしかしたら覚えている方もいらっしゃるかもしれない。

聴いていただければわかってもらえると思うが、とにかく全曲ポップであり、それでいてどの曲もひねりが利いていて、一筋縄ではいかないくせもの揃いのアルバムだ。

まずM1「Henrietta」からして秀逸だ。ジャキジャキ刻むギターから始まり、ミドルテンポで進行していくのかと思いきや、BメロからいきなりBPMを倍速解釈。

目まぐるしく展開されていきながら、ポップネスがまったく損なわれないのが素晴らしい。ヴォーカルのジョン・フラテリの歌声も絶品だ。

そして先ほども触れたM2「Flathead」。「フラテリ」はイタリア語で兄弟という意味であり、コステロ・ミュージックというタイトルからもわかるように、彼らの音楽にはラテンのノリが流れている。

こちらもM1同様、始まって早々キャッチーなメロに突入し、一気に曲へ惹き込まれてしまう。iPodというよりサッカーのテーマソングになってもなんの違和感もないくらいのスピード感と盛り上げ力を兼ね備えた良曲だ。

そしてなんといってもぼくが大好きなのがM5「Chelsea Daggar」である。スッタカスッタカ、ラフでいて絶妙なグルーヴのドラムからインしてくるギター、そしてピックじゃなくて酒瓶を持っているのではと錯覚してしまうようなご機嫌なコーラスから始まるこの曲。

曲自体はものすごくシンプルなのだが、とにかくシンプルにいいメロディとノリで、自然と身体が動き出してしまうこと間違いなし。

今は自宅で小さい音で聴いているけれど、本当は友人たちと防音のレンタルルームを借りたりして騒ぎながら聴きたすぎる。誰にも迷惑をかけない範囲で。

ふだん洋楽をあまり聴かないという方にも、彼らのポップな音楽はかなり気に入っていただけるのではないだろうか。いつかみんなでヘドバンしながら飲みたいものです。

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