朝ドラ『ばけばけ』の主題歌ができるまで。試行錯誤の中、歩き続けたハンバート ハンバートが活動を振り返る

現在放送中のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の主題歌「笑ったり転んだり」を書き下ろしたハンバート ハンバート。キャリア初となるベストアルバムをリリースし、さらには2025年末の第76回NHK紅白歌合戦にも出場が決定。おめでたいニュースが続く中、改めて朝ドラ主題歌の制作について話を聞いた。

photo: Ayumi Yamamoto / text: Katsumi Watanabe / edit: Emi Fukushima

──『ばけばけ』の主題歌を制作するにあたり、どんなリクエストがありましたか?

佐藤良成

制作側から言われたのは、ドラマのモデルになった小泉節子(セツ)さんの書籍『思い出の記』を読んでおくこと。そして、ドラマ自体が夫婦の物語なので、歌は私たち2人の掛け合い。声が重なったり、また離れてったりするように歌うイメージをとのことでした。それ以外の注文は、まったくありませんでした。

佐野遊穂

大きな仕事なのに、あまりにリクエストがなさすぎて驚きましたね。

佐藤

注文が多い方が、イメージがはっきりする場合も多い。私たちの楽曲は、決して派手な曲はありません。その旨、プロデューサーさんや演出家へ伝えたところ「ハンバートらしい曲が欲しいです」と返事があり。とにかく、好きに作ってくださいと。

佐野

こちらから「ほかに、なにかありますか?」とか、少し粘ったりして(笑)。

佐藤

自分たちで、最初から規制しても面白くないので、いつも通りに作詞・作曲、編曲していきました。ダメだったら直せばいいかと。出来上がった音源を演出家の方へ送ったら「バッチリです。このまま行きましょう!」と、すぐに連絡が来て。直しも一切なしでした。

──ベスト盤『ハンバート入門』は、スタッフが選曲されたそうですね。収録楽曲は、ほぼ年代順に並んでいて、「笑ったり転んだり」で聴ける掛け合いのボーカルは、グループ初期から確立されていることがわかりますが、具体的にはいつ頃から始まった試みだったんですか?

佐藤

基本的に佐野がメインボーカルですが、音楽的な特徴を出すため試行錯誤を繰り返し、「メッセージ」(2001年)くらいから、掛け合いでも歌い始めたのかな。

佐野

「バビロン」(08年)の頃は、私生活で親になった時期とも重なり、レコーディング方法などの制作面に加え、生活のすべてに試行錯誤をしながら、新しい音楽を作ろうとしていましたね。当時の気持ちを今回改めて感じました。

佐藤

そうやって作り上げた自分たちらしさが「笑ったり転んだり」にもつながっていると思う。

──現在は、ドラマや映画の主題歌、劇伴も数多く手がけていると思います。影響を受けたサウンドトラックはありますか?

佐野

さだまさしさんの『北の国から』のテーマ曲、劇中に流れる曲になるのかな。

佐藤

『北の国から』は好きすぎて、一度話を始めると、気分が富良野一色になってしまうので、語るのは年に1度にとどめています(笑)。近年だと『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の劇中歌かな。内容も好きだし、私たちにとっては懐かしい80sヒット。間接的に影響を受けていると思います。

左から、佐藤良成(Vo & G)と佐野遊穂(Vo)

朝ドラ主題歌が話題の2人が選ぶ、最愛ドラマ挿入歌

Netflixドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の劇中曲からベストを選曲。

「スティーヴン・キング原作の80年代のホラーのようなテイストが好きで、観てみたらハマりました。シーズン2で謎の少女・エルと身元引受人のホッパーが、一緒に部屋を掃除する時にかかる①がいい。

①Jim Croce「You Don't Mess Around with Jim」

また、エルと、彼女に恋心を寄せるマイクが一緒にダンスする時の②も最高」(佐藤)。

②The Police「Every Breath You Take」

「私が子供の頃、実家が営んでいたお店で、よくラジオで③がかかっていて。シーズン4で流れていて、思わず童心に返らされた一曲」(佐野)

③Baltimora「Tarzan Boy」

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