──『ばけばけ』の主題歌を制作するにあたり、どんなリクエストがありましたか?
佐藤良成
制作側から言われたのは、ドラマのモデルになった小泉節子(セツ)さんの書籍『思い出の記』を読んでおくこと。そして、ドラマ自体が夫婦の物語なので、歌は私たち2人の掛け合い。声が重なったり、また離れてったりするように歌うイメージをとのことでした。それ以外の注文は、まったくありませんでした。
佐野遊穂
大きな仕事なのに、あまりにリクエストがなさすぎて驚きましたね。
佐藤
注文が多い方が、イメージがはっきりする場合も多い。私たちの楽曲は、決して派手な曲はありません。その旨、プロデューサーさんや演出家へ伝えたところ「ハンバートらしい曲が欲しいです」と返事があり。とにかく、好きに作ってくださいと。
佐野
こちらから「ほかに、なにかありますか?」とか、少し粘ったりして(笑)。
佐藤
自分たちで、最初から規制しても面白くないので、いつも通りに作詞・作曲、編曲していきました。ダメだったら直せばいいかと。出来上がった音源を演出家の方へ送ったら「バッチリです。このまま行きましょう!」と、すぐに連絡が来て。直しも一切なしでした。
──ベスト盤『ハンバート入門』は、スタッフが選曲されたそうですね。収録楽曲は、ほぼ年代順に並んでいて、「笑ったり転んだり」で聴ける掛け合いのボーカルは、グループ初期から確立されていることがわかりますが、具体的にはいつ頃から始まった試みだったんですか?
佐藤
基本的に佐野がメインボーカルですが、音楽的な特徴を出すため試行錯誤を繰り返し、「メッセージ」(2001年)くらいから、掛け合いでも歌い始めたのかな。
佐野
「バビロン」(08年)の頃は、私生活で親になった時期とも重なり、レコーディング方法などの制作面に加え、生活のすべてに試行錯誤をしながら、新しい音楽を作ろうとしていましたね。当時の気持ちを今回改めて感じました。
佐藤
そうやって作り上げた自分たちらしさが「笑ったり転んだり」にもつながっていると思う。
──現在は、ドラマや映画の主題歌、劇伴も数多く手がけていると思います。影響を受けたサウンドトラックはありますか?
佐野
さだまさしさんの『北の国から』のテーマ曲、劇中に流れる曲になるのかな。
佐藤
『北の国から』は好きすぎて、一度話を始めると、気分が富良野一色になってしまうので、語るのは年に1度にとどめています(笑)。近年だと『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の劇中歌かな。内容も好きだし、私たちにとっては懐かしい80sヒット。間接的に影響を受けていると思います。

朝ドラ主題歌が話題の2人が選ぶ、最愛ドラマ挿入歌
Netflixドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の劇中曲からベストを選曲。
「スティーヴン・キング原作の80年代のホラーのようなテイストが好きで、観てみたらハマりました。シーズン2で謎の少女・エルと身元引受人のホッパーが、一緒に部屋を掃除する時にかかる①がいい。
①Jim Croce「You Don't Mess Around with Jim」
また、エルと、彼女に恋心を寄せるマイクが一緒にダンスする時の②も最高」(佐藤)。
②The Police「Every Breath You Take」
「私が子供の頃、実家が営んでいたお店で、よくラジオで③がかかっていて。シーズン4で流れていて、思わず童心に返らされた一曲」(佐野)
③Baltimora「Tarzan Boy」