時代によって変化するデュエット曲。昭和から令和まで辿る、カップルの心模様の掛け合い

純愛、空虚な愛、遠距離恋愛。カップルが、それぞれの心模様を掛け合うデュエットソングは、時代や流行によって変容するようだ。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: Katsumi Watanabe

デュエットの起源を辿ると、17世紀前後のイタリア、バロック初期に誕生したオペラへ辿り着く。物語を劇的に演出するため、二重唱(duetto)が書かれ、数々の作品で多用された。中でも、恋愛物語が人気を博したことから、男女によるデュエット曲が生まれることになる。

19世紀のアメリカで、オペラから影響を受けたミュージカルが誕生。ラブストーリー用のデュエット曲が大量生産され、こうした楽曲は、その後の映画やテレビへと受け継がれていく。

日本におけるデュエットソングは、アメリカ文化の影響が強い。石原裕次郎と牧村旬子の「銀座の恋の物語」(1961年/*1)、吉永小百合と橋幸夫による「いつでも夢を」(62年)といった楽曲は、共に映画の主題歌や挿入歌だ。

「銀恋」は、繊細に揺れ動く男女の心の機微と、ブラスセクションを伴ってムード満点に歌われ、江夏圭介と酒井和歌子「大都会の恋人たち」(68年)や、ロス・インディオス&シルヴィア「別れても好きな人」(79年/*2)といった、後のデュエットソングに大きな影響を与えている。

70年代は、フォークソングの影響から、チェリッシュ「てんとう虫のサンバ」(73年)など、シンプルな伴奏に、将来を見据えたリアルで素朴な愛のデュエットがヒットする。チェリッシュやダカーポ、ヒデとロザンナは、実際の夫婦にもなった。また、作曲家の平尾昌晃と畑中葉子が歌った「カナダからの手紙」(78年/*3)は、リズムアレンジなど、ニューミュージックから影響を受けて作られた新しい方向性のデュエットソングだ。

80年代、日本経済の好景気と呼応するように、デュエットソングも次第に派手になっていく。CMソングとして発表されたもんたよしのりと大橋純子による「夏女ソニア」(83年)、石川優子とチャゲによる「ふたりの愛ランド」(84年/*4)は、アッパーなテンポとシンセの派手なアレンジがまばゆい。企業戦士と呼ばれ、休みなく働くサラリーマンたちは、日頃のストレス発散にカラオケスナックへ集った。

そこで小林幸子と美樹克彦「もしかして PARTⅡ」(84年/*5)、前田吟と滝里美「男と女のラブゲーム」(87年)といった、いわゆる不倫におわせ系のデュエットソングを、お店のママや同僚たちと歌った。その筆頭が、ヒロシ&キーボー「3年目の浮気」(82年/*6)。タイトルからして、つくづく80年代は牧歌的な時代だったことがわかる。

景気に陰りが見え始める80年代後半、デュエットソング界に新しい波が到来する。それが鈴木雅之と鈴木聖美による「ロンリー・チャップリン」(87年/*7)だ。リズム&ブルースと歌謡曲を熱心に聴いて育った姉弟が、日本語と英語を折り込んだ歌詞を用意し、ブラックミュージック・マナーを取り入れた歌唱法で、息の合ったデュエットを披露。ブラックミュージックを昇華させた名曲として、今も歌い継がれている。

90年代に入ると、通信制のカラオケボックスがブームに。デュエットのラブソングは、若年層がみんなで歌える曲が中心になっていく。中山美穂と〈WANDS〉による「世界中の誰よりきっと」(92年/*8)は、トレンディドラマの主題歌に起用され、キャッチーなサビで人気を博す。鈴木雅之は、菊池桃子と「渋谷で5時」(93年)を発表。歌詞に登場する「サボタージュ」などワードセンスも光り、一部で流行語になった。

鈴木雅之と鈴木聖美「ロンリー・チャップリン」(1987年)
中山美穂とWANDS「世界中の誰よりきっと」(1992年)

2000年代に入ると、携帯電話が一般にも普及。CDを購入せず音楽を聴く方法は、10代を中心に広がっていった。離れて暮らす恋人への寂しい気持ちを歌った青山テルマfeat. SoulJaの「そばにいるね」(08年/*9)は「着うた」で、850万ダウンロードを記録。携帯電話でやりとりをするような、完全に2人きりでの世界観が斬新に響いた。

2010年代は、ニコニコ動画などの動画共有サービスで楽曲を発表するミュージシャンやボカロPの中から、スターが登場。DAOKOと米津玄師が、17年に映画主題歌として共作し「打上花火」を発表。そんな米津は、22年のテレビアニメ版でメインテーマを担当した映画『チェンソーマン レゼ篇』でも主題歌を、そしてエンディングテーマには、宇多田ヒカルを迎えた「JANE DOE」(25年/*10)を発表。今後も世界公開が予定されており、日本のデュエットソングが世界中でどう聴かれるか。今から楽しみだ。

青山テルマfeat. SoulJaの「そばにいるね」(2008年)
DAOKOと米津玄師「打上花火」(2017年)
米津玄師と宇多田ヒカル「JANE DOE」(2025年)

見つめ合ったり、寄り添ったり。ロマンティックなデュエットジャケ

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