人生の先輩たちにとって音楽体験こそが愛。ラブソングを通して振り返る人生

今は簡単に音楽を検索して、いつでもどこでも聴ける時代。だけど、あの頃は音楽との出会いが奇跡のようだった。人生の先輩たちにとって音楽体験こそが愛。

photo: Hiyori Korenaga / text: Anna Abe

音楽の移ろいとともに歩んだ人生

木村佳子

ラブソングと聞いて、エルヴィス・プレスリーの「好きにならずにいられない」が真っ先に浮かびました。声が素敵で。

磯部清志

私もよく聴いていました。彼は最初カントリーミュージックをやっていた。その頃のカウボーイの生きざまや故郷への思いを歌った曲も愛に溢れていました。

高橋英子

私が惹かれるのはブレンダ・リーの「この世の果てまで」。働き始めの頃に買ったレコードは今でも持っています。

木村

私も好きです。色んな人がカバーしてましたよね。70年代はカーペンターズが歌ってました。

磯部

戦後はアメリカの文化がどっと入ってきましたね。映画やお店で流れるのはほとんどアメリカの音楽。夢中になりました。

高橋

レコードは拭いたり針を替えたり手間がかかるけど、それが音楽への愛着にもなりますね。

磯部

その前は蓄音機ですよ。手回しでした(笑)。

東京〈アメニティーライフ八王子〉の人々
充実のシニアライフを過ごせる高齢者施設〈アメニティーライフ八王子〉。歌を歌うサークルもあり。左から、市川晶子さん、木村佳子さん、磯部清志さん、高橋英子さん、鈴木まき江さん。68〜87歳の2世代が集まった。

市川晶子

最近はYouTubeで手間をかけずに音楽を聴きます。2022年、夫を亡くした時に偶然見つけたのが2VOICEの「YOU~120歳のラブソング~」。長年連れ添った夫婦同士の気持ちを歌っていて、泣いてしまいました。

You あなたとふたりで 歩いて来たみちには
You 思い出の花が 色とりどりに揺れてる

「YOU~120歳のラブソング~」2VOICE
2016年リリース。70年代「Mr.サマータイム」などがヒットしたサーカスのユニット曲。

鈴木まき江

私が小学生の頃は今よりも音楽と出会う機会が圧倒的に少ない時代。音楽の授業で聴いた、童謡「鞠と殿様」が素晴らしくて、音楽を好きになりました。

高橋

戦後は労働や平和などの歌を通じて社会変革を目指す、うたごえ運動があって。戦場の恋人を思うロシア民謡の「カチューシャ」を歌った記憶があります。

カチューシャの歌声 遥かに丘を越え
いまなお君をたずねて 優しその歌声

「カチューシャ」ダーク・ダックス
1956年リリース。歌謡界にブームを起こしたコーラスグループの代表曲。原曲のロシア民謡を日本語でカバー。

磯部

歌声喫茶が全国にありましたね。お客が一緒に歌うんです。

木村

就職したての頃カラオケが流行っていて、職場の人たちとよく行きました。安全地帯の「恋の予感」や五木ひろしと木の実ナナの「居酒屋」は懐かしい。みんなが同じ曲を知っていて、一緒に歌えるって素敵ですよね。

風は気まぐれ あなたを惑わせるだけ
恋の予感が ただかけぬけるだけ

「恋の予感」安全地帯
1984年リリース。カラオケの定番曲として愛される。片思い中の期待と不安を感じる、井上陽水の歌詞は今も色褪(あ)せず。

鈴木

私は最近、人生で初めてカラオケを体験しました。ハマってしまいそうです(笑)。

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