自分が作った曲を振り返って、一番愛を歌っていると思ったのは、ドラマ『妻、小学生になる。』(2022年)の主題歌として書き下ろした「灯火」ですね。プロデューサーの方から「家族に感謝の気持ちを伝えるような曲にしてほしい」というリクエストがあって。私自身、少し前に大好きだった祖母を亡くした時期で、すごく寂しい気持ちがあったので、個人的におばあちゃんに向けた曲でもあるんです。
発表から3年経ち、今もライブのたびに「灯火」を歌っていますが、寂しさ以上に、祖母と過ごした日々が、優しい時間だったと思えるようになってきました。おばあちゃんの言葉や抱き締めてくれたときの温もりなど、残してくれた愛情は自分の体の中に入り込み、誰にも奪われないし、置き忘れてしまうこともない。愛情とは、人が人に与えられる最大のプレゼントだと実感しています。
たくさんある祖母との思い出の中でも、一番印象に残っているのが「おばあちゃんのハンバーグ」のソースのレシピ。煮込み風の少し甘辛い味つけで、よそでは食べたことのないものですが、本当においしくて。祖母から母が口伝で受け継ぎ、今では自分でも作っています。生前のおばあちゃんからソースの分量を「“さしすせそ”で覚えなさい」と言われていました。

しかし、砂糖、醤油まではいいんですが、その後にいきなりソースが来て、みりん、水、粉チーズ、あとケチャップという。一家全員「どこが“さしすせそ”やねん!」と突っ込んでいて(笑)。家族とはいえ、思い出や記憶は受け取る側によって印象が違ってきます。でもおばあちゃんが試行錯誤を繰り返し、残してくれたレシピは、ちゃんと形になっている。みんなで思い出を共有することができるから、本当にありがたい。
私の祖母のことは知らなくても、「灯火」を聴いてくれた方に、大切な人との記憶を思い出してもらえたらいいなと思います。
どこへも行かないで
優河「灯火」
この愛の海に浮かび
夜明けのような
あなたのそばにいたい
タイピングで発見した新しい歌詞の書き方
私自身、これまで具体的な自分の恋愛観を歌ったことがほとんどありません。日常生活のことや、その中で感じた広義の愛を歌にすることが多く、その気持ちを伝えるため、音楽を作り始めた最初の頃から、歌詞は曲よりも先に手書きでしたためていました。
しかし、最新作『Love Deluxe』を作っていたとき、楽しいメロディのダンサブルな楽曲が多く、フォーク的な質感だった作品と比べ、格段に歌詞の言葉数が多くなった。そこで、タイピングで歌詞を書いてみたんです。もちろん自分の気持ちは込めていますが、誰かにメッセージを打つみたいに、自分が普段使っている言葉のまま書けることがわかって。
手書きだと文字も自分の一部だけど、タイピングだと無機質な文字で、ちょっと客観的な気持ちで書けるというか。日本語の新しい乗り方が発見できて、楽しい体験でしたね。これなら、また新しいラブソングが作れるかもしれません。
暗い夜を照らす月のよう
優河「愛を」
あなただけを包みたい
