3つのポイント
1.ヘッドシェフは元〈Dos Palillos〉桑原孝一。
2.懐石とカタルーニャ食文化を融合したメニュー。
3.開店1年弱でミシュラン・セレクテッド選出。
五感を刺激し非日常へといざなう、バルセロナ屈指の和食店
「ここに来るその日だけ、日本を感じてほしい」。炊きたての土鍋ご飯を前に笑顔で語るのは、日本人シェフの桑原孝一氏だ。
2010年に渡西し、ミシュラン常連のレストラン〈El Celler de Can Roca〉を経て、同1ツ星の〈Dos Palillos〉で7年間にわたり経験を積む。ヘッドシェフも務めた後、昨年7月に独立。
元プロフットサル選手であるオーナーの利根幸進氏と共に、〈SCAPAR〉をオープンさせた。

メニューはカタルーニャ名産のウナギや白米、ガリシア州発祥のパドロン唐辛子など、旬の伝統食材を使った、懐石ベースの計13皿のコース。スペイン人にはあまり馴染みのない、日本式のおまかせスタイルが、ローカルにはとりわけ新鮮なようだ。
西洋カボチャとガリシア州ビーゴ産のカツオ節でとっただしをワイングラスでいただく、食前酒ならぬ“食前だし”の一杯もウケている。
店名の「エスカパール」は、スペイン語で「逃避」を意味する。その名の通り、ここは約2時間ばかりの間現実から離れ、特別な日に時間を過ごす場所なのだ。
ワラと土を混ぜて造った昔ながらの土壁に、BGMに流れる日本の虫の音。味覚や嗅覚だけでなく、視覚や聴覚もフルに使うよう計算された演出が心憎い。
寿司のその先、もう一歩踏み込んだ和食を求める舌の肥えた人々が足を運び、開店し1年弱でミシュラン・セレクテッドにも選出。バルセロナの食シーンでの存在感は増すばかりだ。




