京の余白を持ち帰る。わざわざ買いに行きたい、京都のお土産 〜和菓子編〜

風情ある店の佇まいや、座売りや量り売りで楽しむ店主との会話、そこでしか出会えない特別な品などを目当てに、京都には、わざわざ行きたい店がある。ここでは和菓子を紹介。店を訪ね、試し、思い出と共に持ち帰ろう。

photo: Kiyoshi Nishioka / text: Yuko Saito

〈大黒屋鎌餅本舗〉の鎌餅

73歳の店主から、“おおきに”と手渡される餅菓子は、味もひとしお

御年73歳。あん炊きから配達、接客まで、今日も一人で店を切り盛りする山田充哉さんあっての鎌餅である。店まで出向き、50年近く作り続けてきたという粉まみれのその手から受け取れば、おいしさもひとしおというものだ。

山田さんは3代目。祖父である初代が、鞍馬口の茶店で売られていたこの菓子の製法を受け継ぎ、1897年に現在の阿弥陀寺の門前で菓子屋を始めたという。

求肥の生地が、まだ熱いうちにこしあんを包み、瞬く間に、豊作を願う鎌の刃の形に形作り、経木で巻いていく。軟らかく滑らかな求肥(ぎゅうひ)の食感はもちろん、朝の7時に釜に火を入れ、炊き上がるのは夜10時というこしあんが、これまたさらりと上品でたまらない。

〈松屋常盤〉の味噌松風

堺町御門を目指して向かう、江戸期から続く一子相伝の菓子

京都御苑の堺町御門を真正面に見ながら、向かう。そんな道すがらの景色がいい。店は、その手前でひっそりと暖簾(のれん)を掲げる。店内には螺鈿(らでん)細工の菓子箱、正面には“大本山大徳寺御用達”の木看板が掛かり、御所や寺の御用を務めてきた菓子屋であることが見てとれる。創業は承応年間。

その大徳寺の和尚から製法を伝授されたとされるのが味噌松風で、以来、17代にわたってこの菓子を作り続けている。材料は、京の白味噌と小麦粉、砂糖、そして表面にポツポツと散る黒ゴマのみ。味噌と粉を練って、練って焼き上げるという。

カステラに近い見た目ながら、味も食感も別物。味噌の香ばしさを感じるみっしりとした生地は、後を引くおいしさだ。

〈亀末廣〉の古都

京都らしさが色濃く残る姉小路通で、暖簾をくぐって手に入れる干菓子

姉小路通は、街中にありながら、歴史のある建物が立ち並び、古都の趣を感じることができる通りである。中でも目を引くのが、築100年を超える商家の軒先に「御菓子司龜末廣」の看板が掛かる、堂々たる間口の京菓子店だ。

臆せず、暖簾をくぐれば、ほかでは得難い風格ある菓子屋の景色が広がる。創業は1804年。江戸時代には御所にも菓子を納めるなど、広く商いを続けてきたが、戦争で一時、閉店。戦後、それを復活させたのが6代目。

帳場をぐるりと囲む飴色のカウンターに並ぶ銘菓の多くは、その6代目が折々に触れて考案した菓子で、「古都」もその一つ。都の名所に四季の景色をあしらった、和三盆糖と玄米の美しい干菓子である。

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