6人が語る、NHKの6大ジャンルのドラマ論。〜岩井俊二とSFドラマ〜

NHKが代表する大河、朝ドラ、SF、社会派、青春、ホームドラマの6大ジャンル。それぞれの魅力を6人のドラマ好きがリコメンド作品を紹介します。テレビにおけるSFドラマの一時代を牽引したNHKには「少年ドラマシリーズ」をはじめ多くの名作が眠っている。映画監督・岩井俊二が考える、自身に影響を与えたSFドラマを語る。

illustration: Yoshifumi Takeda / text: Mikado Koyanagi

70年代、「少年ドラマシリーズ」が打ち立てたSFの時代

実は、NHKドラマのオタクだったんですよ(笑)。小学生の頃は「少年ドラマシリーズ」、中学生くらいになると「銀河テレビ小説」や「土曜ドラマ」。人形劇の『新八犬伝』がきっかけで、『グラフNHK』という雑誌を定期購読するようになって、マニアックにNHKドラマを追っかけて観ていたという謎の中学生でした。その影響は計り知れませんね。いまだに、当時のNHKドラマのリストを眺めながら、次回作を考えたりするくらい。

少年ドラマシリーズは、筒井康隆さんの『時をかける少女』を最初に映像化した『タイム・トラベラー』からスタートしたので、SFが多い印象だと思いますけど、文芸作品も結構あって、個人的にはそっちの影響の方が大きいかもしれません。

でも、SFは学校では人気のジャンルで、眉村卓さんとか光瀬龍さんとかの原作ものは、みんなの共通の話題になっていましたね。中でも、後に自分がリメイクすることになった『なぞの転校生』は、その時にまた観直したんですけど、すごく良かったですね。

少年ドラマシリーズ『なぞの転校生』
少年ドラマシリーズ『なぞの転校生』
1975年に「少年ドラマシリーズ」として制作された。原作はジュブナイルSFを得意とした眉村卓。「思春期の我々にとって衝撃だったのは、ヒロインが主人公を裏切ってほかの男の人を好きになったことです(笑)」

ある中学校に、謎めいた転校生がやってくるという話なんですけど、それが向こう側の世界の人間で。そのパラレルワールドでは戦争が行われていたりとか、一度そっちに旅立った人たちが傷だらけで戻ってきたりとか、向こう側の世界で起きていることのすさまじさを転校生が学校で急に語りだしたりとか、とにかく衝撃だったんです。

眉村さんの原作が書かれたのは1960年代だったと思うんですけど、ドラマは75年に作られていて、その頃ベトナム戦争の影響で、カンボジアなどからの難民が日本に流入していた時代だったんですよね。そのメタファーという意味もあったんじゃないかな。外から来る人たちをどう受け入れたらよいか、そういう現代的なテーマを持っていました。

向こう側の世界で起きていることはあまり描かれなくて、こちら側にやってきた人たちを通して、未来だったり、パラレルワールドだったり、彼らの世界を垣間見ることができる。僕らはそれを想像するしかない。

でも、もともとの原作の仕掛けやアイデアが素晴らしかったので、それが僕らのリメイク版にも効果的に働きました。深夜ドラマ枠で予算は少なかったけど、向こう側の世界のスケール感は出せたんじゃないかと思います。

大人たちが全力で作った子供のためのSF

あと、オンデマンドに上がっているものでは、『幕末未来人』ですかね。2人の男の子が気づいたら幕末の時代に来ていたという、いわゆるタイムスリップもの。そのうちの1人は、『なぞの転校生』で人気になった星野利晴さん。歴史の教科書と照らし合わせながら観ていましたよ。

少年ドラマシリーズ『幕末未来人』
少年ドラマシリーズ『幕末未来人』
1977年に「少年ドラマシリーズ」として制作された。これも原作は眉村卓。2人の男子高校生のタイムスリップもの。「途中から、2人のせいで、桂小五郎が死んだりとか、歴史が書き換わっていくんですよね」

少年ドラマシリーズは80年代の初めに終わってしまうんですが、比較的最近のものだと、『六番目の小夜子』にはその残り香が感じられましたね。やっぱり、あの頃は全力で子供目線のドラマを作ってくれる大人がたくさんいたんですよね。それが、少年ドラマシリーズの核になっていた。

ドラマ愛の詩『六番目の小夜子』
ドラマ愛の詩『六番目の小夜子』
2000年に「ドラマ愛の詩」として制作された。ある中学校に伝わる「サヨコ」伝説の謎に2人の少女が挑む。「この作品には、1980年代の初めに終わった少年ドラマシリーズの残り香が感じられましたね」

一方で、銀河テレビ小説とか土曜ドラマの枠は、本気で大人のためのものを作っている。僕らの中学時代は、その両方を楽しめたんです。まさに、その頃のNHKドラマは僕らの情操教育にもなっていたと思います。影響を受けて、自分の映画につながったものは、中島丈博さん脚本の『わが美わしの友』とか、ほかにもたくさんあります。そうした作品がもっとオンデマンドで観られるといいですね。

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