人生を切り開く女性主人公に毎朝勇気づけられる
男性を軸にした歴史が描かれることが多い大河ドラマに対して、朝ドラの主人公は主に女性。いずれの作品も、夢を抱いて地方から上京してきた女の子が、自らの才覚で力強く人生を切り開いていくというテーマが大前提にあります。私自身、年齢を重ねるにつれ、そうした女性たちの生きざまにエンパワーされるようになりました。
初めてハマった作品は『あぐり』。美容師を目指すヒロインあぐりを演じる田中美里さんが隣県の石川県の出身だったことから、私の地元・富山でも話題になっていて。高校生の時、登校する時間ギリギリまで粘って、毎朝観ていました。
登場人物がみな魅力的で、特に「結婚だけが幸せじゃない」とのリベラルな考えを持つあぐりの父が印象的。そんな親の教えもあってか、あぐり自身は鷹揚でカラッとした性格。道楽者の夫の女遊びを知っても嫉妬に狂うことなくケロッとしています。最先端の職業だった美容師を目指したのも偶然の出会いから。周りの影響を受けつつ人生を流れに任せて展開させていく点が素敵でした。
偉人の物語も良いですが、自分の人生に自覚的ではない普通の女の子の人生が描かれていたからこそ、高校生の私にも届きました。「女の自立」というテーマに、ライトに触れられる、軽やかな良作です。

美容家の吉行あぐりをモデルに、美容師を志すあぐりの半生を描いた。1997年放送。「朝ドラのヒロインは、中年以降、急に厄介な人物になることも。でもあぐりは我が強くなく、年を重ねても自然体な点に好感を持ちました」
歴史に載らない女性の生き方を追体験する
テレビドラマは一貫して視聴率を求められますが、数字は決して作品の質と比例するものではありません。例えば、視聴率が振るわなかった『ちりとてちん』は熱狂的なファンが多い作品です。当の私もその一人。DVDボックスを買い、当時mixiでファンコミュニティを運営していたほどです(笑)。
あの頃の私は小説家を目指して上京し、新人賞を受賞したもののなかなか前進できず苦しんでいました。そんな折に偶然テレビで観たんです。それは、貫地谷しほりさん演じる喜代美が落語家を志す成長物語ですが、同時に、女同士の友情も色濃く描かれていました。私自身が書きたかったものが詰まっていたんですよね。
喜代美は、朝ドラヒロインらしからぬ、マイナス思考で不器用な性格。同級生に同姓同名の人気者がいて、脇役扱いで「B子」と呼ばれます。けれどもその人気者の存在は、主人公にとって成長の原動力にもなるんです。
一方で順子という達観した親友もいて、高校で落ちぶれてしまう喜代美を「あんたの人生の主役はあんたや」と励まします。また母との複雑な関係性も描かれる。友情あり母娘の物語あり、そのうえで夢を追いかけるという、全方位にバランスが取れた脚本が、素晴らしかったです。

福井県小浜市と大阪を舞台に、落語家を目指す和田喜代美の成長物語。2007年放送。「落語の演目と絡めて物語が展開する脚本が見事。人生経験を積み、反発していた母親の偉大さに少しずつ気づいていく姿もグッときました」
そして『おしん』は、教科書には載らない近代化の過程と、魔の家制度が追体験できる世紀の名作。高校生以上は必修科目として観てほしいくらい(笑)。ほんの100年前ですが、明治末期の小作の家がいかに貧しく、女性差別が過酷だったか……。
戦前の家父長制の下に生きる女性の悲惨さが身に染みて、背筋が伸びます。どん底の貧困から、高度経済成長で豊かになったことの弊害まで描き尽くすこの大長編が、アジアでも人気なのは、国が発展を遂げるロードマップを知れる作品だからじゃないかと思います。
個人的に『あまちゃん』『おちょやん』といったコメディタッチの作品が好みですが、深刻な物語でもテンポ良く、一瞬の緩みもなく描くずば抜けた筆力に、脚本の橋田壽賀子先生のすごみを感じます。全く同じ脚本でリメイクしてほしいくらい。主演はぜひ、『おしん』を演じた田中裕子さんとも佇まいが通じる、河合優実さんでお願いします!

山形の貧しい小作農家に生まれたおしんの波瀾万丈な人生。1983年放送。「おしんがクエスト的に運命の人と出会い、学びを得て成長する展開が素晴らしい。1年間放送され、全297話と長いですが、飽きずに観られます」