6人が語る、NHKの6大ジャンルのドラマ論。〜山崎怜奈と大河ドラマ〜

NHKが代表する大河、朝ドラ、SF、社会派、青春、ホームドラマの6大ジャンル。それぞれの魅力を6人のドラマ好きがリコメンド作品を紹介します。1963年の放送開始以来毎年舞台を変えながら、歴史上の人物の数奇な生涯を活写しているNHK大河ドラマ。『篤姫』を機に歴史愛が花開いたという山崎怜奈が、その魅力を語る。

illustration: Yoshifumi Takeda / text: Emi Fukushima

語られなかった歴史と、余白から膨らむ人間ドラマ

私が思うNHK大河ドラマの最大の魅力は、教科書ではほとんど語られない人物の生涯を通じて、各時代を深く知ることができる点。もちろん、織田信長や徳川家康のような有名どころも描かれますが、彼らのそばで奔走、暗躍した人物も主役に据えられるところが面白いんです。

小学生の頃に初めて観た、幕末の薩摩藩や大奥を舞台にした『篤姫』でも、男性たちが執り仕切る江戸幕府の裏で、それぞれの立場から社会に接する女性たちに光が当たります。絵本などで描かれるプリンセスとは異なる自立した“姫像”も当時の自分には新鮮で(笑)。以来、大河を観るのが習慣になっています。

まず好きな作品の一つが、『鎌倉殿の13人』。脚本家の三谷幸喜さんが、鎌倉幕府の二代執権・北条義時を中心に権力側の内部抗争を描いています。義時は次第に強権を振るうようになる、いわば“ダークヒーロー”なんですが、序盤はピュアな青年だったのに、徐々に目に光が入らなくなり、闇落ちしていく。子役時代がなく一貫して小栗旬さんが演じるからこそ変化が顕著で、当時のシビアな生きざまをまざまざと突きつけられました。

第15話以降の粛清が続く展開は苦しいですが、時折コメディ要素も挟まれるギャップも。緩急のバランスが良く、観やすさも併せ持っています。それにしても、かつて源頼朝がこんなにも株を落としたドラマってあるんでしょうか……(笑)。大泉洋さんの演技が素晴らしいことはもちろんですが、登場人物の人間くささと、一癖ある愛らしさを際立たせるキャラクター造形は三谷さんの作品ならではです。

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
鎌倉時代、源頼朝の臣下だった北条義時は、激しい内部抗争を経て、次第に武士の頂点へ。2022年放送。「時代劇然とした言い回しでなく、終始我々の会話に近い言葉で進むため、大河ビギナーも観やすい作品です」

そして、そんな三谷さんが一番好きな大河ドラマだと言っていたことから、後追いで観たのが『黄金の日日』。戦国時代を舞台に、フィリピン・ルソンとの交易を切り開いた呂宋(るそん)助左衛門の物語です。大河ドラマでも頻繁に舞台となる戦乱の世ながら、武士ではなく商人の目線から描かれるのが新鮮で。

たしかに領土の奪い合いが頻発していましたが、織田信長が楽市・楽座を実施するなど商売が花開く時代でもあるんですよね。市井を生きる人のドラマに親近感が湧きましたし、主演の現・松本白鸚さんを筆頭に、緒形拳さん、丹波哲郎さんら、時の名優たちの覇気にも圧倒されました。

大河ドラマ『黄金の日日』
大河ドラマ『黄金の日日』
物語の始まりは安土桃山時代。堺の豪商の下で下働きをする呂宋助左衛門は、フィリピンのルソン島への漂着を機に海外との交易を切り開く。1978年放送。「ほとんど描かれてこなかった人物を主役に据えた、大河の真骨頂です」

古(いにしえ)の世界への没入を促すドラマ美術にも注目を

一方、セットや小道具、衣装などの美術の素晴らしさもまたNHK大河ドラマの醍醐味。吉高由里子さん演じる紫式部を軸にした『光る君へ』では、武力闘争とはまた異なる、生きるための戦いとでも言うべき宮廷の内情を、雅な世界観で描いています。十二単(ひとえ)、屏風、装飾品、どれをとっても美術品のような美しさで、大河ドラマ史上初めて美術に特化した解説書も発刊されました。

撮影の裏側に迫ったNHKの『100カメ』では、宮中行事のシーンで背景として映り込む庭の、遣水(やりみず)の流れ方やカモの動きにまでこだわる様子が記録されていたことにも驚きましたね。今から1200年以上前の、極めて古い時代の物語に没入できるのは、ビジュアル的な完成度の高さゆえだと思います。大石静さんの脚本も素晴らしかったです。

例えば『枕草子』で華やかな宮廷生活を書き綴った清少納言は、時に、今で言う“キラキラ女子”と思われることがありますが、本作では、自らが仕え、辛い状況に置かれる一条天皇の皇后・藤原定子に少しでも光を見せようという一心で書物にまとめた忠臣として描かれます。史実の点と点を豊かにつなぎ合わせる書き手の想像力にも、毎作胸を打たれています。

大河ドラマ『光る君へ』
大河ドラマ『光る君へ』
学者を父に持つまひろ(後の紫式部)は、藤原道長への思いを胸に、稀代の女性作家へ成長。2024年放送。「放送時は、SNSでの平安時代マニアたちによる考察が盛んでした。源氏物語と照らし合わせて観ると一層楽しめます」
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