パナマのジャングルプランツ
解説/ニルス・ウィーシーズ
オランダの大学で進化生物学を学び、ハーバリウムや野外調査に携わるニルス・ウィーシーズさん。熱帯雨林の小型草本類、中でもサトイモ科の植物を愛する彼が、8日間でパナマの全土のジャングルと、西はコスタリカ、東はコロンビアの国境付近までを巡った、南米自生地旅の物語。

パナマのジャングルに潜む、小さな草木たち
それは2022年4月のこと。オランダから11時間の直行便を経て、混沌として忙しないパナマシティに到着した。夜明けとともに出発し、最初の目的地のバジェ・デ・アントンへ。ここは典型的な螺旋状の花序と細長い葉を持つアンスリウム ウェンドリンゲリの群生地として有名だ。曲がりくねった道沿いの湿った森の高い木々から、いくつものアンスリウム ウェンドリンゲリが垂れ下がっていた。また友人が驚くべき植物を案内してくれた。私の頭よりも大きな花を咲かせるモンステラ ティタナムだ。だが、時間は限られている。すぐに次の目的地、サンタフェ国立公園へ向かった。
標高の高いサンタフェに到着すると、同じアンスリウム ウェンドリンゲリが見られた。しかし、ここに生えているものは葉がずっと幅広く短かった。北の海岸に向かう途中、道路沿いに大きな滝を発見した。興味を引かれ森へと入ると、友人たちはすぐに近くでアンスリウムを見つけた。しかし、私が目を奪われたのは滝の周囲の岩だった。そこには、アンスリウム ルピコラやスパティフィラムキンディエンセといった渓流環境に適応したサトイモ科植物が生えていた。ホマロメナやスキスマトグロッティスと似た植物で、常に湿った空気に包まれた岩で育つ。
その後、滝のそばの岩の上に落ちた枝を見つけ、私は大好きな小型の着生蘭を探し始めた。これらの蘭は滝のそばの高湿度の場所で生長し、日当たりの良い樹上で育つ。普段は手が届かない場所に生えるが、落ちた枝はそれを見つけるチャンスとなる。枝には、地衣類やコケ、シダ類がびっしりと生えており、有名なエラフォグロッサム ペルタツムもあった。蘭だけでも10種以上があり、私の親指の爪よりも小さなプラティステレ テイロリイも!そして、枝にぶら下がる不思議なものを見つけた。作り物のように鮮やかな紫色の葉。その葉を裏返すと、これも蘭だとわかった!それはレパンテス パントミマ──めったに発見されず、写真すらほぼない謎の蘭だった。こうして探索の一日が終わり、日没前に森を後にした。
旅も折り返し地点を迎えた。数日間のドライブを経て、著名な〈エル・ジャノ=カルティ道路〉へと到達した。この道路は、パナマシティの東側で唯一、内陸から海へと抜ける歴史的なルートであり、グナ・ヤラの生物多様性に富んだジャングルを貫いている。学者たちにとって絶好の調査地であり、その生態系は詳しく記録されてきた。ここではディクラノピギウム“グナ・ヤラ”やアンスリウム クナヤレンセを見ることができる。夜遅くに着いたロッジは閉業していて、交渉の末、電気も水もトイレもない部屋に1人80ドルで泊まることになった。野犬のせいで一晩中眠れなかった。
翌朝、我々は植物探しに出発した。森の中に入って数分もしないうちに、ディクラノピギウム“グナ・ヤラ”を見つけた。小さな植物で、漆黒に近い青色の葉を持ち、葉柄と葉裏は赤い。歩みを進めるごとにその数は増え、やがて地面は何千ものディクラノピギウムで埋め尽くされていた。その数はあまりに多く、前に進むには彼らを踏まなければならないほどだった。
成熟すると、ディクラノピギウムの花序は爆発し、母株の周囲に何千もの種子を自動的にまき散らして、大規模なコロニーを形成する。その群れの中に、大きく光沢のあるディクラノピギウム サディスティチウムが1株だけ見つかり、葉は黒と赤が均等に交ざっていた。この色は、同じ川筋に自生するモノレナ ドレスレリやゲッペルチア ドレスレリと同様に、低光量への適応だといわれている。森の静かなざわめきに包まれながら漆黒の植物たちの中に立っていると、まるで隠された世界に足を踏み入れたような気がした。















