新旧が混じり合い新たな価値を創出。韓国・ソウルのデザインともの作りの現場を訪ねる

時代の変化に適応しつつもしたたかな意志を感じる韓国のデザイン。新しい価値観と伝統が交錯するソウルで活動するアーティストたちと、独自の品揃えで勝負するショップを訪問。そこには、しなやかに生きるクリエイターの姿があった。

photo: Kazuharu Igarashi / text&edit: Keiko Kamijo / coordination: Shinhae Song, Chiharu Fujimoto (TANO International)

古い知恵から誕生する新しいもの作り

カラフルな登山用のロープや電線、ナイロンのロープを編み込み、小さくて繊細なオブジェクトからダイナミックなインスタレーションまで、手を使って自由自在に形作る。職人的な手仕事やクラフト的感覚といった伝統的なもの作りに根差しつつも、工業製品や大量生産品を用いて非常に現代的な作品を制作する、アーティストのイ・カンホさん。

ソウルから程近い京畿道(キョンギド)の田舎にあるという九里市に生まれた彼のもの作りの原点となる記憶は、農業を営んでいた祖父母の姿であった。

「昔の人たちは周囲にあるものを使って道具を作り出すのが当たり前の生活でした。例えば、藁(わら)を編んでカゴを作ったり、農業に使う鋤(すき)や鍬(くわ)なども木を削って手作りしたり。だから、遊び道具とか欲しいものがあったら作ればいいという感覚は当時に培われたのだと思います」

手を動かして何かを生み出すというもの作りを続けていきたいと思い、美術系の大学へ進学。金属工芸を選択した。なぜ金属だったのかは、好きな人にアクセサリーを作りたかったからという、なんとも微笑ましい理由だった。金属の溶接や彫金、板金等の技術を身につけ、創作の幅は広がったが、卒業制作では結局自分が一番好きな編み物で作品を提出。教授たちからは好まれなかったと彼は言うが、自らの手とはさみでどんな形でも生み出す現在のスタイルは、大学時代に誕生していたのだ。

彼の代表的なシリーズは、主にロープを編み上げていく「Obsession(オブセッション)」と銅板をエナメルや漆で覆ったオブジェや家具のシリーズ「skin(スキン)」の2つ。そのほかにも、デザインワークとして木材や石、フェルトを用いた家具等、非常に多様な素材を用いて制作している。「Obsession」シリーズの作品は、すべて彼のスタジオで2人のスタッフとともに手作りで制作されるが、工場やメーカー等とコラボレーションする作業も多い。

もの作りの達人ばかり!乙支路3街の町工場へ

彼にソウルで紹介したい場所を教えてほしいと依頼した。連れていってくれたのは、長年お世話になっているという乙支路3街(ウルチロサムガ)にある町工場だった。現在、このエリアは開発の波が押し寄せている。1軒目に訪ねた金属溶接専門の工場は、40年この場所で溶接業を営んでいたそうだが、今年で閉じるのだという。

「学生時代から何かを作りたいと思ったら工場のおじさんたちに相談していました。近所は小さな工場だらけなので“それなら○○さんに聞けばいい”と紹介してもらえる。彼らは素晴らしい技術と知恵を持っていて、話をしていると次のアイデアが湧いてくる。彼らのおかげで作品の幅が広がりました。ソウルの街は新旧入り乱れていてゴチャゴチャしたところが魅力だったのに、最近の都市開発は古い部分を一掃してしまう。それが残念でなりません。このようなソウルの古き良き部分にも目を向けてもらえたら嬉しいです」

現代アーティストと町工場の社長
現代アーティストと町工場の社長。ソウルのデザインを支えるのは職人の手仕事なのだ。

ユーモアのある視点でプロダクトと向き合う。韓国のデザインを牽引するクリエイティブスタジオ〈KUO DUO〉

常に変化する一瞬を土に込める。韓国のデザインを牽引する陶芸家、チョ・ヒジン

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