令和の農家はポッドキャストで連帯する。
「農系」の番組、増えてます。
「本日は年末出荷、また、消防団の夜警等お忙しいなか、お集まりいただきありがとうございます」。昨年末に開催された『農系ポッドキャスト総会議』の冒頭挨拶だ。
全国から18番組が集合し、オンラインで開催されたこのイベント。「農家は農作物に愛情を持つべきか」「豊作時にSOSを叫んで売ることの是非」など、農家が直面する課題がユーモアたっぷりに議論された。
呼びかけたのは、福岡『ノウカノタネ』の3人だ。若手農家である彼らは、ネットを駆使し、学術論文を読み込んで農業に向き合う。最先端のやり方は保守的な先輩たちに理解されないこともあったが、今やその仲間は全国に。
普段は見えない農業のリアルに楽しく触れられる番組。聴けば野菜を見る目が変わること請け合いだ。
うずうずしているその旅行欲、アジア愛♡あふれる2人にお任せあれ。
旅行気分で聴く路地裏アジア話。
音楽家の菅原慎一さん、ラジオパーソナリティの竹内将子さんによるアジアカルチャー紹介ポッドキャスト『好玩電台』。「ガイドブックとは一味違うオリジナルなアジアの旅」というのは竹内さんのお言葉。
これまで全8回にわたり、台湾や韓国のコアなカルチャー事情やゲストの熱いアジア愛など、現地直送の情報を届けてきた。「現地で旅をするように番組作りをしている」と語る通り、お気に入りの場所や思い出話を軽快に、しかし精緻に話すのは実際にアジアを歩いてきた2人ならでは。
台北の音楽スポットをまとめた『台北音楽散策/TAIPEI MUSIC MAP』を横に置いた回では、ライブハウスの裏事情から人気スイーツまで現地でしか知り得ない情報を目いっぱい紹介。昨今なかなか大きな声では言えない「旅行したーい!」という気持ちの行き場を、ここに求めるのもいいかも。
カミングアウトした人たちだから受けられる相談がある。
真剣すぎて時に喧嘩も。軽妙でも、本気。
「世の中とLGBTとのグッとくる接点をもっと」というコンセプトで活動する〈やる気あり美〉の太田尚樹さんとみしぇうさんによるお悩み相談番組『そうだ!ゲイにカミングアウト』。
寄せられる相談はセクシュアリティにまつわるものが多いが、LGBTQに関する悩みを入口に、恋愛や友情などの普遍的な課題へとつながることも珍しくない。「立場の異なりを理解したうえでの共感、“エンパシー”を自分の中のテーマとして、相談者やその周囲の事情を想像しながら悩みと向き合うようにしています」とは太田さん。
ふとした時に2人の素が見える(時に本気の言い合いも)のも番組の魅力だが、太田さんは「もう少しちゃんとしないと」とはにかむ。この番組を通じて自分の人間性や考えもわかってきた、と話す彼は楽しげだ。
コントにオカルト、なんでもあり!Spotifyオリジナルの本気。
番組一つ一つに何かしらチャレンジを。
定期更新中の番組が14を超え、月曜から金曜まで新しいコンテンツの上がらない日はないSpotifyオリジナルのポッドキャスト(しかもすべて無料)。
多様かつ独創的なラインナップを形作っているのは、2020年6月に立ち上がったSpotify Japan ポッドキャストチームだ。「キャスティング、番組構成、音の作り込み……番組ごとにさまざまですが、何かしらのチャレンジを込めて制作しています」と語る意気込みに偽りはなく、ロバートが音でコントをやったかと思えば、雑誌『ムー』編集部がオカルティックなトークを展開し、kemioはマイペースにHIKAKINや星野源と対談する。
Spotifyは世界規模で音声への投資とクリエイター支援に注力。市場拡大を図っている。「いろいろな展開を考えてますので、期待していただいて大丈夫です!」。耳をかっぽじって待ちましょう。
『ムー公式超日常ポッドキャスト』は、Spotifyと出版社による「#聴くマガジン」シリーズ第1弾。アメリカ大統領選の陰謀やイルミナティなど、らしい話題が面白い。
『kemioの耳そうじクラブ』はkemioが今一番会いたい人や一流の人をゲストに招くトーク番組。唐突にビッグなゲストがやってくる。
徳島から世界へ!トッキンマッシュの大逆襲。
Spotifyが惚れ込んだクオリティと人気。
トッキンマッシュ。毎月4番組10本以上のポッドキャストを配信し、全国にファンを抱える徳島発の5人組ポッドキャスティングクルーだ。2020年7月「JAPAN PODCAST AWARDSでの大敗」を契機に突然すべての活動を停止。
その去就が注目されていたが、復活の時は突然やってくる。今年1月、代表作『墓場のラジオ』新シリーズを日本初のSpotify独占配信番組として制作すると発表。界隈は騒然となった。
トッキンマッシュの始まりは2006年。地元にとどまりくすぶっていたシブとノブの雑談を、上京した仲間にも聴かせようと始めたネットラジオがきっかけだった。
あくまで趣味としてマイペースに活動を続けていたが、2016年「Appleが選ぶBestポッドキャスト」に選ばれリスナーが急増。YouTuberの台頭によってノンプロが作るコンテンツが注目される流れからポッドキャストの可能性を感じ取ると、一気にアクセルを踏み込んで、いくつもの“ポッドキャスト初”を成し遂げていく。
人気番組の長所を分析・注出した番組作りに始まり、リアルイベントの開催、グッズや楽曲制作に過去エピソードの有料販売など、リスナーを驚かせる仕掛けを次々と打ち出していった。
「今年、僕らはポッドキャスト制作会社として合同会社TCMを立ち上げました。プレーヤーとしてはもちろん、15年間培ってきたノウハウを持つ制作者としても音声コンテンツの未来に向かって挑戦していくつもりです」(シブ)。今後はより挑戦的なコンテンツを展開していくという。自ら劇的なストーリーを紡いできたトッキンマッシュ。クライマックスはこれからだ。