誰にでも撮れるけれど、誰にでも「決定的瞬間」を捉えられるわけじゃない、それが写真撮影の王道、スナップショット。神々の研ぎ澄まされた妙技を観よう。
Henri Cartier-Bresson(アンリ・カルティエ=ブレッソン)
カメラで世界をスケッチしたスナップショットの達人。
「決定的瞬間」がキャッチフレーズ/ライカの達人/絵画で磨いた構図のセンスが生きる/顔ばれを嫌い撮られることを極力避けた/写真を始めて2年でニューヨークで個展/戦争中に死亡説が流れるがMoMAの個展に颯爽と現れる/黒枠はノートリミングの証拠/ロバート・キャパらとマグナムを設立/晩年はドローイングに専念。
Walker Evans(ウォーカー・エヴァンス)
撮影者の存在を消し、記録に徹したステルス写真家。
大恐慌時代のアメリカの農村部を克明に記録/地下鉄で正面に座った人をこっそり撮影/クールで乾いたトーン/ニューヨークMoMA初の個人写真展を開催/8×10と中判、35ミリを併用/若き日に文学を志しパリに遊学/キューバでヘミングウェイと意気投合し、取材日程を延ばして痛飲/『フォーチュン』誌のフォトエディター。
Josef Koudelka(ヨゼフ・クーデルカ)
世界を放浪して撮影した私的で詩的な風景。
ソ連のプラハ侵攻を撮影。匿名で配信されたその写真がロバート・キャパ賞金賞受賞/故国を出たあと17年間無国籍/亡命者の視点で世界を捉える/愛機は35ミリとパノラマ/こってりした黒味の強いモノクロプリント/カラー写真を撮ったのは一度だけ/カメラマンベストを愛用/現代のマグナムを代表する「作家主義」の写真家。
Garry Winogrand(ギャリー・ウィノグランド)
現像が追いつかないほどアメリカを路上から撮り続ける。
1960年代、公民権運動とベトナム戦争に揺れるアメリカを路上から記録/道ですれ違いざまにスナップ撮影/ライカに28ミリレンズ/撮る理由は「写真になったらどうなるかを見たいから」/初期は『スポーツ・イラストレイテッド』『LIFE』などで撮影/作家に専念後は大学で教鞭を執る/亡くなったとき、未現像フィルムが2,500本。
Lee Friedlander(リー・フリードランダー)
都市を見る目を変えてくれる意表を突く構図の魔術師。
広角レンズの歪みを大胆に生かした驚きの構図/空っぽなストリートに不穏な空気を漂わせる/モノクロを再現する印刷を製版技術者とともに開発/何度も来日し写真集『Cherry Blossom Time in Japan』を刊行/無名時代のマドンナのヌードを撮影/初期はライカに35ミリと50ミリレンズを愛用し、90年代からはハッセルブラッドを多用。
Saul Leiter(ソール・ライター)
晩年になって注目を浴びたカラー写真のパイオニア。
1950年代のニューヨークを撮影したカラースライド/複雑にレイヤーが重なった構図/コダクロームのシブい色彩/ユダヤ教の神学校を中退し画家を志す/ニューヨークで抽象表現主義の画家たちと交流/『ヴォーグ』などのファッション誌で活躍/モノクロ写真の上にペインティング/2000年代に入り初期のカラー写真が注目を集める。