世界注目のスケートボードブランドの発起人
ロンドン発、気鋭のスケートブランド〈PALACE SKATEBOARDS〉(以下PALACE)の躍進が止まらない。2009年の設立以降、クールでユニークなアプローチのプロダクトが目を引き、瞬く間に世界のファッションシーンから注目を浴びることに。
18年に世界3店舗目となる東京店をオープンした際も、1500人を超えるファンたちが列を成したほど、日本でも厚く支持されるブランドだ。そんな〈PALACE〉の共同設立者でありクリエイティブディレクターのレヴ・タンジュに話を伺った。
「ロンドンのスケートカルチャーは最高だよ!世界で一番好きな町だし、スケートの歴史も豊かで、大好きなスケーターを何人も育ててきた。僕たちが活動の拠点とするサウスバンクは〈PALACE〉が生まれた場所であり、常にカルチャーの中心にある。
〈PALACE〉は様々な角度からシーンに影響を与え、スケートカンパニーの既成概念を曖昧にし、その境界線を打ち破ってきたと思う。そして何より僕にとって重要なのは、このカンパニーが今までとは違うレンズでロンドンを表現したことだ」
「ロンドナーとして誇りを持って愛せるスケートブランドがイギリスにはない、それなら自分たちで作ろう」との思いから友人のギャレス・スクイスと立ち上げた〈PALACE〉は、現在プロ・アマ含め20名弱のスケーターが所属する。中にはルシアン・クラークやルーカス・プイグなど、世界的に有名なスター選手の姿も。レヴの思い描いた通り、〈PALACE〉は世界が羨む、トップ・スケートブランドへと上り詰めたのだ。
自分たちの“好き”に忠実に、スケートブランドの枠を超える
〈PALACE〉が特異なのは、やはりファッションシーンとの深く広い交流だろう。近年は〈GUCCI〉といったラグジュアリーブランドから〈Engineered Garments〉のようなトラッドなブランド、さらに〈RIMOWA〉といったラゲッジブランドまで幅広くコラボレーションし話題を生んできた。異業種との取り組みに対して、どのようなアプローチでもの作りをしているのか?
「自分たちが好きなブランドと仕事をし、お互いのノウハウを共有したい。僕たちには美しい金属製のラゲッジを作ることができないから、〈RIMOWA〉のように、そのカテゴリーで最高の仕事をしているブランドと“本物”を作るのはエキサイティングだよ。最近の話で言えば、昔から大ファンだった日本の〈PORTER〉と特別なコレクションを作れたことは、素晴らしい経験だったね」
さらに続けて、ファッションシーンにおける〈PALACE〉のポジションについて、こう語る。
「〈PALACE〉は自分たちが好きなものに正直で忠実なのだと思う。だから僕たちは常にファッションとスケートをミックスしてきた。時にはトラックスーツを着てスケートに行き、時には古い〈CELINE〉を着てディナーに行く。自分たちの中に限界や境界線を作りたくないんだ。今まで誰もやらなかったことをたくさんやってきて、それが評価されたのだと思う。
多くのビッグメゾンが初めて僕たちに門戸を開き、ブランドのDNAをいじらせてくれたのは、僕たちが自分たちのクリエイションが好きで、彼らをとても尊敬していることが伝わったからだ。スケートカンパニーがそんなことをするのは初めてだと思う。大好きなことに向き合い続けさえすれば、スケートボードのファミリービジネスがここまで大きくなれるんだってことを世界に示すことができてうれしいよ」
“スケートブランド”や“ファッションブランド”といった世俗的な垣根を飛び越えて、自分たちの好きなモノ・コトを貫く姿勢が、多くの人の心を動かしている。レヴに「かっこいい大人って?」と聞くと、「着古した服に新しいものをうまくミックスしている人かな。“Nicholas Cage's Airport Outfits”ってググって見てほしい。あれはかなり“かっこいい大人”だと思うよ!」と答えてくれた。
自分のルーツに新しさを上乗せし、更新し続ける感覚が大切なのだという。〈PALACE〉がもたらす次のサプライズは何なのか、今から楽しみだ。