Talk

Talk

語る

お笑いトリオ・ロバート「漫才とコントの違いはヒゲを描けるかどうか」

変だけど絶対にいそうな人と、彼らに巻き込まれる普通の人という構図で、さまざまなコントを繰り広げるロバート。漫才とコントは同じ空間で見ることが多く、その境界は時に曖昧になるが、作り手の感覚は似て非なるもの。コントにこだわってきたロバートが語る、漫才のこと。

初出:BRUTUS No.835『漫才ブルータス』(2016年11月1日発売)

photo: Satoko Imazu / text: Ikuko Hyodo

秋山竜次

僕らは、養成所の頃からコントしかやってこなかったけど、M-1グランプリが始まったとき漫才に挑戦したことがあるんです。

山本博

1年目だけですけどね。

秋山

結局漫才の作り方がよくわからないまま、予選敗退しましたけどね。キャラクターの名前をつけて演じるってことをずっとやってきたから、素で出ていく感じとか、しゃべりのテンポとかがつかめなくて。

馬場裕之

小道具もないしね。

山本

今日みたいな衣装にも、実はめちゃくちゃ頼ってる(笑)。

秋山

僕らからしたら、そういうことに一切頼らない漫才は、相当な芸だと思いますけどね。僕らは音を使うことが多いんですけど、音響さんのミスで音が鳴るべきところで鳴らなかったりすると、固まるしかない。役に入っているので、アクシデントの対応が難しいんです。

馬場

暗転しなくて終われなかったときもあるよね。3人で素に戻って「ありがとうございました!」って帰って、今までのは何だったんだよ、みたいな空気になってた。

秋山

そうそう、漫才と違ってコントは、キャラから外れる瞬間を一番見せたくないんですよ。

謝罪しに行く格好で、人を笑わせに行くすごさ

秋山

僕らが漫才をすると、引き出しがないぶん漫才師っぽい立ち居振る舞いをして、どうしても漫才師のコントになっちゃうんです。理想の漫才師像を演じている時点でそれはコントだから、究極言うとすべてはコントなんじゃないですか?

山本

たしかに、漫才とコントの境界って考えるほど難しいよね。

馬場

漫才はマイクから離れると、コントっぽくなるんじゃない?

秋山

何メートル離れたらダメっていうルールはたぶんないけどね。実際に音を拾ってるのはピンマイクだとしても、サンパチマイクは真ん中に必ずあるよね。そうなってくると、いよいよあのマイクそのものが漫才ってことになってくる……。

山本

漫才っていうコントのセットになっちゃうだろ。

秋山

あのマイクって面白いこと言ってください!と言わんばかりの四角だよな。あの四角の前にいるだけでかなりの威圧感だと思う。あとスーツでやるっていうのもすごい。

馬場

ふざけてるようには、まず見えないからね。

秋山

だってスーツって、謝罪しに行く格好でしょ。あれで人を笑わせに行くんだから。僕なんかヒゲがないと不安でしょうがなくて、どんなキャラでも仕上げにヒゲを描かないとウケないんじゃないかっていう病気みたいになっちゃってるから。

山本

新ネタで初めてキャラを見ると、大体こんな顔してるよね。

馬場

僕らは、何かつけないと物足りないんだよね。

秋山

漫才をやっている方はスーツでそれだけウケるんだから、ヒゲを描いたらもっとウケると思います。

山本

それがもうコントなんだよ!

秋山

そうか、漫才とコントの一番の違いはそこなのかも。ヒゲを描いて違和感があるかないか、だよ!

お笑いトリオのロバート
地方で活動する兄弟CMソングライターと、ディレクターのコントの衣装で。