着ていた人の暮らしに
想いを馳せる
古着のデニムは過去に生きた人からの手紙のようなものだ。年代ごとに歴史的背景や時勢が如実に表れる。対談は“デニムライフ”。年代物が訴える先人からのメッセージとは?
内田斉
大坪さんは160年の歴史がある501®に精通されていながら、1960年以降の手刺繍が施されたジーンズが特にお好きですよね?
大坪洋介
パッチワークや刺繍から、持ち主の趣味や想いなどが垣間見えて興味深いんですよ。
内田
確かに。とりわけヒッピー世代は対抗心が強いですよね。愛だ、平和だって刺繍しながら、クスリを入れるポケットもあったり……。
大坪
自己主張の道具だったんでしょう。1970年代のLAにいましたが、個性を競うコンテストが全米で開催されるほど人気でしたからね。
内田
細部まで驚くほど手が込んでいるジーンズとかありますよね。原形がないくらい(笑)。1980年代にはもう買い付けされてたんですか?
大坪
はい。まだ古着ブームの前で、西海岸はほぼ手つかずの状態でした。情報がない分、街の洋品店に一軒一軒足を運んで、ストックを見せてもらえるまで通う。そうすると仕方なく開放してくれるんですよ。結局人情勝負ですから。
内田
それわかります!ヴィンテージが繋げてくれた縁や出逢いもあって、僕とその人の思い出もすべてデニムに投影されるというか……。
大坪
人の手を渡るものですからね。自分もデニム史の一部なんだっていつも思わされます。
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