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〈大人計画〉初の試みの舞台に、シソンヌじろうが出演。振り切った演技はどこから生まれる?

平凡パンチライン『Wife is miracle〜世界で一番アツい嫁〜』は〈大人計画〉初の試み。5人の女優のリクエストを基に宮藤官九郎さんが脚本を執筆する。稽古開始直後の池津祥子さん、猫背椿さん、ゲスト出演するシソンヌじろうさんに語ってもらった。

photo: Ayumi Yamamoto / text: Tomoko Kurose

池津祥子

今回は企画から関わらせてもらい、どんな役をやりたいか聞かれたんです。

猫背椿

普段は与えられた役をやらせていただくものなので、初めての経験でした。

じろう

そうだったんですね。

池津

自分は何が好きなのかを改めて考える機会をいただいてありがたかったです。そこから、設定やお呼びしたいゲストなど、これまでにないくらいみんなで何度も話して、じろうさんに出ていただけることに!

じろう

大人計画さんの舞台に呼ばれるなんて嬉しかったです。脚本もすごく面白くて、フリからオチまでお笑いの構成としてきれいにまとまっていて。宮藤さんがどういう順番で書かれたのか気になりました。

池津

意外とスムーズに書けたと聞いてびっくりしました(笑)。青森県津軽地方の旧家の話で、私たちは嫁役。じろうさんは4兄弟のほか計7役!

猫背

本読みの段階でもめちゃくちゃ面白かったです!兄弟が続けてしゃべる場面もすでに演じ分けされていて、驚きました。

じろう

兄弟の年齢が2歳差とか微妙なのでどう表現したものかと(笑)。難しいですけど、やりがいがあります。今年、芸歴20周年になるので節目にふさわしい……って外の公演で言うのもヘンな話ですけど。

猫背

私はシソンヌのライブに通うくらい大好きなので、じろうさんの女性役も少年役も見たいと会議で言っちゃったんです。そうしたら、池ちゃんが「じろうさんはせっかく外の公演に呼ばれるのに、いつもと同じことをやらされることにならない?」と大人な意見を言って、その通りだなと。

池津

私、そんなこと言ったっけ? 

猫背

でも、出来上がった台本を見たら、宮藤さんはすべての希望を聞いてくれていて……じろうさん、ごめんなさい! 

じろう

いえいえ(笑)。キャラクターにはこだわりがあるので、その場にいるのが不自然だと気になりますが、宮藤さんの脚本は何のストレスもなかったです。僕の動画をたくさん観てくださったみたいで。

池津

よかった。役の人物がやりそうにないことはしたくないですよね。私もドラマなどで求められた時は、その人がしそうな振る舞いを考えますが、役をはみ出して「池津がやっている」みたいなお芝居はやりたくないです。

じろう

僕もドラマで呼ばれた時は極力そのまま、余計なことはしたくないですね。「面白くして」と言われたらやりますけど。

猫背

私は笑いが大好きなので、ついどうやったら面白くなるかなと考えちゃいます。だから、逆にシリアスな芝居を求められた時は大丈夫かなと心配になりますね。

池津

じろうさんは子供から女性まで、すごく鮮やかにいろんな人を演じられますよね。それはご自身にあまり関心がなくて、他人に変身することに憧れがあるからなのかなと勝手に想像していたんです。でも今回ご一緒して、そうではなくて、すごく愛されてきた人なんじゃないかと思って。

じろう

ハハハ。

池津

子供の頃から愛されてきたから、ひねくれていない。何をやっても許されるという安心感があるから振り切れる。

猫背

きっとそうだ!愛されっ子だ!

池津

シソンヌのネタに出てくる人たちもみんな魅力的で嫌な感じが全然ない。人間が好きなんだろうなと思ったんです。

猫背

すごく腑に落ちました。

じろう

(笑)。子供の時から周りの人には恵まれてきたなと思います。今は結構、嫌な時代になってきていますけど、人間のことはまだ信用して、ネタを作っていますね。

猫背

今回の舞台は津軽弁がたくさん出てきて、東京出身の私からしたら外国語みたいで憧れます。じろうさんも演出の木野花さんも青森出身。青森公演やりたいですね。

じろう

弘前だったら、劇場も埋まるかも?みんな観たがると思いますよ。

池津

本当に⁉数年先でもいいから、それまでセリフを忘れずにいるので、ぜひ!

猫背 椿、じろう、池津祥子
猫背 椿(左)、じろう(中)、池津祥子(右)