食いしん坊の飽くなき探究。
LicaxxxさんはメインのInstagramアカウント(@licaxxx1)以外に、「本日の一皿」と題したサブアカウントを持っている。プロフィール欄には「@licaxxx1 による食べることの自由研究」と一言だけ。並ぶ写真は、料理のみ。そもそも、大人になってからの「自由研究」ってなんだろう。
「太さを変えたり、ピーマンの切り方を変えたり、かなり実験に近い形で修正を重ねて、何回も投稿している。しかも、誰にお題を出されているわけでもない。まさしく自由研究だなって思うんです(笑)」
以前は「別に誰に見せるわけでもなく。ほんとに日記みたいな感じ」だったので鍵アカだったが、コロナ禍のタイミングで「数も溜まったし、そろそろ公開してみようかって感じ」で公開アカウントに。更新のテンションに違いはなく、変わったことと言えば、ハッシュタグを付けなくなったことくらい。
「誰でも見られる状態にはあるけど、誰かにわざわざ見せようとしているわけでもない。それこそ、小学校の壁に貼ってあるぐらいのテンションです。ハッシュタグを付けなくなったのは、このアカウントに人を集めたいと思ってないからかも」
Instagramを選んだ理由は、ブログサービスと違って文字が少なくても成立するから。絵日記をそのまま載せているようなものなので、材料やレシピが事細かに書かれることはない。そうした力の抜き具合は、料理自体にも表れている。
「『これをつくろう』と思って材料を買うと、使い切れない食材が残っちゃうのでコスパが良くないんですよ。それよりも、冷蔵庫のなかにあるもので、いま自分の気分のものをつくれるほうが料理は長続きしますね」
自由研究的な力の抜き具合は、写真にも通ずる。あくまで食べることがメインなので、撮影の際にテーブルコーディネートは一切しないという。
「完成したら、5秒以内にスマホで撮って、10秒以内には口に入っています。最近は2、3枚で写真も決まるようになったし、ブレても『必死に食べたかったんだな』って想像してくれたら、それはそれで面白いかなって」
Licaxxxさんは店で食べた料理を再現したいと思ったとき、「和える、合わせるレベル」なら、想像で近づくことができるという。たとえその場ではわからなくても、「なんとなくやってみて、ちょっと足りないな」と足し引きしながら、最終的には店の味を再現してしまう。そこまでの味覚を持っているとなれば、料理が仕事になる日も近いはず。しかし、自由研究が仕事になった場合、果たしてそれは自由研究と呼べるのか。DJ以外にも様々な顔を持つだけに、あらたに“料理研究家”といった肩書が加わったとしてもおかしくはないが。
「そうですよね。いま、この取材を受けている時点で間接的にでも料理が仕事になってますからね。でも、仕事でつくりたいわけじゃないので。食べることが好きで、つくるのはあくまで自由研究。そう言っておけば、趣味感が担保される。そこがいいのかな」
料理だけでなく、掃除でもなんでも、誰しもが日常的に工夫や改善を行うなど、自由研究的な実験は行っている。しかし、それらを“研究”と呼んだ途端にどこか身構えてしまう。大人の自由研究とは、些細な個人的探究に没頭することへの言い訳であり、ユルさこそが魅力なのだ。