中国・ハルビン朝市へ
大阪駅前発の市バスに揺られること約30分で、府内東部・大東市へ。移動ですっかり旅気分だが、幹線道路沿いに突如現れる、混沌とした活気に仰天する。中華食材店〈華龍食品〉の店先に屋台がずらりと並び、老若男女が列をなす。麻花や油条といった揚げパンが次々に揚げられ、蒸籠の中には出番を待つ肉包、その隣には目の前で焼き上げる中国式クレープ・煎餅果子も。
さらに、麵包(パン)の屋台には、トウモロコシの粉を配合した食事パンや、あんこを挟んだ甘いデニッシュも揃う多彩な顔ぶれ。クミンの香りに誘われた先には、小さな炭床の熾火で串刺し羊肉を炙る、中国人女性の姿も。
日曜朝市の成り立ちを、スタッフの上條裕基さんはこう話す。「約25年前。中国東北地方・黒龍江省ハルビン市出身の閆景龍さんが、近隣に住む中国人に向けて食材を売るようになったのが始まりです」。
スタッフはもちろん客の9割が中国人で、飛び交う言葉も中国語。だから商品購入は、指を差すなどジェスチャーで。屋台だけで十分、中国へ旅した気分だが、中華食材がびっしり並ぶ店内を見て回るとさらに楽しい。
圧巻なのは、フロア中央のブースに30種以上並ぶ肉加工品。牛や豚のソーセージ、アヒルや鴨の丸焼き、さらにガチョウの頭の煮込みなど珍しい品もあまた。上條さんいわく、「これらの“熟肉”と呼ばれる加工肉、そして屋台メニューは2階の厨房で手作りしています。食品偽装問題以降、中国食品について良くないイメージを持つ方もいる。それを何とか払拭したい」。
店内には屋台料理を味わえるスペースも。せっかく朝市へ来たのなら、中国の朝食を味わいたい。ハルビン名物・豆腐脳と呼ばれる、塩味のあんかけ豆腐スープは、油条と一緒に。しっかり腹ごしらえしたいなら、イノシシ肉と酸菜(白菜の漬物)を小麦粉の生地で包んだ餡餅もいいだろう。府民にもほとんど知られていない日曜の朝市には、中国人にとっての“日常”が存在していた。