70年代のソウルミュージックからもらったもの。
1968年からディスコへ通い始め、ソウルミュージックに魅了されました。当時お店でかかっていたのはジェイムス・ブラウンや〈モータウン・レコード〉など、日本でも発売されていた曲が中心。思えば、大した知識なんかなかったんです。
73年にイラストレーターやデザイナーたちと、40日間かけてアメリカ各地を旅行した時のこと。みんながすぐにNYへ向かう中、僕と湯村輝彦さんと数人だけ、西海岸に残り、LAやサンフランシスコをゆっくり回ったんです。シスコやサンディエゴのレコード屋では、日本では聴いたこともないような音楽に出会えた。
数日遅れでNYへ到着し、ハーレムの〈アポロ・シアター〉へ。ドラマティックスやチャイ・ライツなどのステージを生で観ることができました。その時の体験は鮮烈で、現在に至るまで基本的に70年代のブラックミュージックが心の中にあります。その中でも、聴いているだけで元気が出るアルバムを10枚選びました。

これも1973年。湯村輝彦さんに、サンフランシスコの〈レコード・コレクターショップ〉へ連れていかれた時、店員がかけていたアルバム。とにかくコーラスワークが鮮やか。前作に収録されていた「Ice-cream Song」も大好きで、いまだにシングルを見かけると買ってしまいます。

1970年代中盤からフィラデルフィアのソウルミュージックが台頭してくる。〈Philadelphia International〉の作品はプロデューサーのギャンブル&ハフが書く曲、専属のMFSBによる演奏が素晴らしい。ブルー・ノーツは、80年代に入ってから米軍基地のライブを観に行きました。

1970年代後半からは、マイアミのソウルにハマりました。KC&ザ・サンシャイン・バンドの大ヒットで知られる〈T.K. Records〉の看板シンガーのデビューアルバム。オルガンのリズムボックスがイントロに入る曲が多く、ホーンセクションが派手でね。聴いていると元気が出てくる。

大成功を収めた〈T.K. Records〉から次々と兄弟レーベルが設立される。音楽的な路線は明るくファンキーなもの。〈Drive〉というレーベルから発表されたマイアミのデビュー作は、トロピカルなテイストがいい。空に浮かぶジャケットのタイトルロゴが、海面にも反射されていてお洒落。

これも〈T.K. Records〉傘下〈Alston〉の作品。1990年代にメアリー・J・ブライジなどにサンプリングされた「Clean Up Woman」が人気。個人的にはちょっと切ないストリングスのアレンジの「If You Love Me Like You Say You Love Me」が好き。7インチシングルも持ってる。

このアルバムが発表されたルイジアナの〈Paula Records〉の作品は、日本ではレア盤だと教えられ、僕が持っていた珍しいベン・E・キングのレコードと交換しちゃったんだよね。そうしたら、80年代に全然再発されていて(笑)。今ではトレードしてよかったと思っている名作です。

アメリカのソウルミュージックを聴いていくうち、行き着くのが、やっぱりメンフィスの音楽だと思う。歌詞がすごく感情的で、演奏もスローなものが多いんです。このオベイションズのアルバムは、サザン・ディープソウルの中では一番好き。聴いていると、どこか励まされる気がします。

1973年にNYの〈アポロ・シアター〉でライブを観たんです。日本にはまだ入ってきていなくて、現地で初めて観ましたね。名曲「In The Rain」で、ミラーボールを使って雨のような演出をしていました。メンバー5人、お揃いのエメラルドグリーンの燕尾服で、すごくカッコよかった。

1977年のアルバム。タイトル曲がFENで何度もオンエアされるので、大好きになっちゃった。当時、湯村さんと僕の間で“名曲はボーカルの前にスポークンワードが入っている”という定義があって(笑)。これはゆっくりしたベースラインの上に、5分以上の語りが入る超名曲。

1976年、原宿にあったレコード屋〈メロディ・ハウス〉の店員に薦められて即買いしたアルバム。チャイ・ライツなど、高いファルセットボイスは、女性受けがいいと思う。テリー・ハフは高い声に加え、楽曲もすごくスイートだから、聴いていて思わず泣いちゃうレコードじゃないかな。