世界にたった1本、オンリーウォッチってなんですか?
色とりどりの宝石が、村上隆の代表作「お花」を華やかに彩る。これは単なるアートピースでは、ない。〈ウブロ〉が「オンリーウォッチ」に出品するために1本だけ製作した、正真正銘の腕時計なのだ。
2005年にモナコ大公アルベール2世の後援でスタートした「オンリーウォッチ」は、その名の通りオンリーワンの腕時計が競売されるチャリティオークション。モナコ筋ジストロフィー協会が運営を務め、収益が筋ジストロフィー治療の研究プロジェクトに還元される。
開催は、隔年。回を重ねるたびに注目度も高まり、2021年開催の前回では、総落札価格が3000万スイスフラン(CFH)に達した。参考までに2023年10月時点でのレートは1スイスフランが約163円である。
そして第10回となる今回は過去最多62ブランドが参加を表明。オーデマ ピゲ、ブレゲ、ブルガリ、シャネル、ショパール、エルメス、ルイ・ヴィトン、ピアジェ、リシャール・ミル、タグ・ホイヤー、ティファニー……と、実に多彩な面々が顔を揃える。
オンリーワンであればどんな時計を作ろうが自由だが、一応、毎回テーマが与えられる。今回のお題は青、黄、オレンジ、赤、フューシャ、緑の“カラー”。これを〈ウブロ〉は、カラージュエリーで表現したわけだ。
ほかのブランドも、テーマカラーに合わせ、既存モデルの素材や色を変えたり、さらにはまったく新しい時計を製作。また〈ウブロ〉は今回のために、センタートゥールビヨンを新たに開発し、そのキャリッジでフラワーの口を象ってみせた。ほかにも自社で初のムーブメントを披露する舞台に、このオークションを選ぶブランドも多い。
見た目だけでなく、唯一のムーブメントが並ぶのも、大きな魅力。ゆえに世界中の時計を愛する富裕層がこの開催を心待ちにし、当日には白熱した入札合戦となる。
出品作品は公式サイトで見ることができる。エスティメイト(落札予想価格)も一応、記載されているが、過去の例から、大半のロットで実際の落札額はこれを大幅に上回ることが必至。ジュネーヴで行われるオークションは、11月5日の現地時間14時にスタート。唯一無二のアイテムが手に入れられるチャンスだ。さあ、あなたも一本、いかが?
過去に最高落札額を記録した時計が、これです
過去9回の歴史でも、〈パテック フィリップ〉はダントツの落札価格を残してきた。上の時計は2019年の作品。両面のダイヤルに、5つのチャイミング機構を含む計20の複雑機構を搭載する。落札価格は時計オークション史上最高額の3,100万スイスフラン(約34億円)を記録した。下の時計は、1923年に製作されたデスククロックをモチーフとした2021年の出品作で、落札価格は950万スイスフラン。