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「オンリーウォッチ」がやってくる!

アート作品のような、世界で1つだけの腕時計を競売にかける。今年は、世界中の時計愛好家が注目する「オンリーウォッチ」の開催年。11月5日、ジュネーヴに62点の出品作が集結する。


※本誌の取材後、「オンリーウォッチ 2023」は2024年に延期、と公式サイトで発表がありました。新たな日程など詳細は引き続き公式サイトを参照ください。

text: Norio Takagi

世界にたった1本、オンリーウォッチってなんですか?

色とりどりの宝石が、村上隆の代表作「お花」を華やかに彩る。これは単なるアートピースでは、ない。〈ウブロ〉が「オンリーウォッチ」に出品するために1本だけ製作した、正真正銘の腕時計なのだ。

HUBLOTのオンリーウォッチ
HUBLOT(ウブロ)
サファイアクリスタル製の「お花」の花びらにはカラーストーンをセット。顔の部分がダイヤルで、その中央には口を象ったトゥールビヨンが回転する。見た目の華やかさに加え、メカニズムも極めて独創的な、今回の注目作だ。落札予想価格:350,000~400,000CHF。

2005年にモナコ大公アルベール2世の後援でスタートした「オンリーウォッチ」は、その名の通りオンリーワンの腕時計が競売されるチャリティオークション。モナコ筋ジストロフィー協会が運営を務め、収益が筋ジストロフィー治療の研究プロジェクトに還元される。

開催は、隔年。回を重ねるたびに注目度も高まり、2021年開催の前回では、総落札価格が3000万スイスフラン(CFH)に達した。参考までに2023年10月時点でのレートは1スイスフランが約163円である。

そして第10回となる今回は過去最多62ブランドが参加を表明。オーデマ ピゲ、ブレゲ、ブルガリ、シャネル、ショパール、エルメス、ルイ・ヴィトン、ピアジェ、リシャール・ミル、タグ・ホイヤー、ティファニー……と、実に多彩な面々が顔を揃える。

オンリーワンであればどんな時計を作ろうが自由だが、一応、毎回テーマが与えられる。今回のお題は青、黄、オレンジ、赤、フューシャ、緑の“カラー”。これを〈ウブロ〉は、カラージュエリーで表現したわけだ。

ほかのブランドも、テーマカラーに合わせ、既存モデルの素材や色を変えたり、さらにはまったく新しい時計を製作。また〈ウブロ〉は今回のために、センタートゥールビヨンを新たに開発し、そのキャリッジでフラワーの口を象ってみせた。ほかにも自社で初のムーブメントを披露する舞台に、このオークションを選ぶブランドも多い。

見た目だけでなく、唯一のムーブメントが並ぶのも、大きな魅力。ゆえに世界中の時計を愛する富裕層がこの開催を心待ちにし、当日には白熱した入札合戦となる。

出品作品は公式サイトで見ることができる。エスティメイト(落札予想価格)も一応、記載されているが、過去の例から、大半のロットで実際の落札額はこれを大幅に上回ることが必至。ジュネーヴで行われるオークションは、11月5日の現地時間14時にスタート。唯一無二のアイテムが手に入れられるチャンスだ。さあ、あなたも一本、いかが?

オンリーウォッチの様子

過去に最高落札額を記録した時計が、これです

過去9回の歴史でも、〈パテック フィリップ〉はダントツの落札価格を残してきた。上の時計は2019年の作品。両面のダイヤルに、5つのチャイミング機構を含む計20の複雑機構を搭載する。落札価格は時計オークション史上最高額の3,100万スイスフラン(約34億円)を記録した。下の時計は、1923年に製作されたデスククロックをモチーフとした2021年の出品作で、落札価格は950万スイスフラン。

〈パテック フィリップ〉のオンリーウォッチ

目移り必至、個性派メゾンが繰り出す第10回「オンリーウォッチ」の注目ロット6選