箭内道彦
この連載もあと1回でお別れです。担当の大池さんには本当にお世話になりました。11年間、様々なおなやみとの向き合いを経て今感じることは、人は不完全な生き物なのだということ。だからこそ心惹かれてしまうのです。おなやみに添えられた年齢と職業、毎回そこからの想像も膨らみました。
今回は(製造業/37歳)。妻と8歳の子の行動が、生産管理の観点からも気になってしまうのかもしれません。僕は逆に愛おしく思いました。残りをバッグに入れたままの奥様も、それを探すお子様も、思い悩み続けるあなたも。
エリイ
これは私のバッグでもやってほしい。食べ残しのお菓子って溶けるんよ。ベタベタにバッグの底に流れ込んでいって染みになり、散らばった化粧品たちをくっつけていく。しかも、昨今のマッドマックスのような激暑の季節には秒で太刀打ち出来なくなる。それを探し出してくれるなんて、助かる。
私のバッグは帰って来た瞬間から何が入っていたか完膚なきまでに忘れてしまう。それが重なっていって部屋にはバッグのミルフィーユが出来上がる。とにかくペットボトルの飲み残しで腐るのとか嫌なので、飲み切るように心がけてる。
大根 仁
そりゃおかしいですよ。自分の潔癖を他人に押しつけるのは37歳のいい大人がやることじゃないすね。むしろ妻さんやお子さんに同情すらします。欠点って別のアングルから見ればツッコミどころであり、チャームポイントやその人が持つユーモアでもありますからね。かつて佐野元春が歌った「つまらない大人にはなりたくない」は、ユーモアを理解しない大人にはなりたくないってことです。
そして人生でいちばん大事なのはユーモアです。うん、さっさと別れて残りのつまらない人生を過ごしてください。あー、気分悪っ!