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箭内道彦、エリイ、大根仁「おなやみ相談室」:美容師会話の鉄板とは

クリエイティブディレクターの箭内道彦、Chim↑Pom from Smappa!Groupのエリイ、映画監督の大根仁が読者のお悩みに答える連載の第267回。見事に三者三様な回答をぜひご覧ください。お悩み相談も随時受付中。前回の「ものがなくなる家」も読む。

illustration: sigo_kun / edit: Asuka Ochi

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ようやくスタイリストデビューできたのですが、お客様との会話が続きません。
先日、好きな食べ物や休みの日の過ごし方など当たり障りないことをお聞きしていたら、
「無理に話しかけなくていいです」と言われ、その後、サロンに来ていただけていません。
お客様とうまくやりとりするにはどうしたらいいでしょうか。(美容師/26歳/女)

美容室での客と美容師のイラスト

箭内道彦

一般には「聞く」と「話す」のバランスや、拾い方や広げ方、知識・観察、時に脱線も必要だったりもするのでしょうね。

でもそもそも、苦手の克服に費やす時間は人生に不要だと僕は考えています。小学校の通信簿に「落ち着きがない」といつも書かれました。努力でそれを得ようとしても、生来落ち着いている人に一生勝てるわけがない。負けたまま一生が終わります。

落ち着きのなさを僕は「フレキシビリティに溢れる」と解釈して仕事に生かしています。腕の良い寡黙なスタイリスト、それでいいんじゃないかとも思います。

エリイ

デビューおめでとうございます。嬉しいですね。美容院の会話って、髪を触るというかなりプライベートゾーンに入ってきているのに初対面でもあったりして古今東西老若男女に渡って議論されていますよね。

あなたはきっと気持ちが入っていない話題を焦りから話しかけたのではないでしょうか。私は酷い時は何年も美容院に行きません。本当は毎日いきたい。

この間、大好きな映画クリエイターが来日して歌舞伎町を案内しました。心が動いたら作品にすると話していて、あなたも心が触れたら動いたら良いのではないでしょうか。

大根 仁

僕は25年以上、丸刈り頭でセルフでバリカンカットしているのですが、その理由はまさしく美容師さんとの差し障りない会話が嫌だったからです。

でもそれは単なる自意識過剰で、美容師さんが悪いわけでもなく今となってはそのくらいのコミュニケーションが取れないでどうする?と、自省しています。

むしろ当たり障りのない会話に憧れるくらいです。26歳女性の美容師さんと当たり障りのない会話、してえ!好きな食べ物とか、おすすめの店の情報交換してえ!!当たり障りのない会話こそが人生の幸せとすら思いますよ。

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