取材を通して出会った商品の数々
セソコさんは神奈川県の生まれだが沖縄にルーツがあり、10年前に移住してきた。編集者として沖縄のお店や工芸の作り手を取材することが多く、沖縄全域に繋がりが増えていったのだそう。
「取材だと、記事が公開されたら関係性はそこで一旦おしまい。でも、そこで紹介したものをお客さんに実際に手に取ってもらう機会や、モノに対して作り手さんと一緒に意見し合える継続的な関係を築いていきたいなと思っていて」
数々の取材を丁寧に行ってきたからこその繋がりと「編集」という観点でお店を作るということも、並べられた商品のセレクトに表れている。
「たとえば今、伊江島という離島のアダンの帽子を販売しています。その工房を見に行ったとき、無造作に置いてあったカゴがすごくよかったんですよ。商品化しましょう、と提案して自由に作ってもらうことになりました。でも、売り物じゃなかったからと値付けが控えめな気がして(笑)。価値あるものと信じているし、作り手さんの生活がちゃんと潤うような適正価格を一緒に考えていきたいですね」
コロナ禍のオープンということもあり、今だからこその関係づくりもできているようだ。
「たとえば宮古島と石垣島の作り手はそれぞれ状況としては似ているけれど、島の作り手同士が交流したり、情報共有することは、簡単ではないと思うんです。
〈島の装い。STORE〉をオープンしたことで、県外から来る観光客だけでなく、沖縄の人たちに沖縄のことを知ってもらう機会になっている。沖縄の人が、沖縄で生まれたものを使うことで、経済が回るきっかけができたらと思っています」
憩いの場として、パーラーも併設
店先には沖縄各地から集められた木工、やちむん、アロマ、お酒、スパイス、テキスタイルなど幅広いラインナップ。販売だけでなく、ワークショップやトークイベントも企画している。
「みんなそれぞれの個性とアイデアを絞りながらやっている逞しさが沖縄の良さだと思っています。それを、お客さんとコミュニケーションしながら伝えていきたいですね」
また、店の一角にはパーラーも併設。沖縄でいう昔ながらのパーラーは、安い沖縄そばや、タコライス、ドリンクなどを売っている場所。ここでは宮古島「モジャのパン屋」のアイスコーヒーや石垣島 タマリンド食堂の島コーラ、オリジナルのシュークリームなどを提供している。ベンチを作ったのにも思惑があった。
「パッと来て買い物をして帰るというよりは、作り手さんや僕らと喋っていけるようにしたくて。パーラーで買い物のついでに飲み物を買って、このベンチで飲み物を飲んでちょっとのんびりしてもらえたら」
ワークショップなどのお知らせを伝える掲示板も、沖縄の離島や団地で見かけるものを模して型を作ってコンクリートを流し込み、オリジナルで作ったそうだ。店舗で販売しているものや参加型のワークショップだけでなく、店に足を運ぶだけで沖縄らしさを感じられる仕掛けがそこかしこにあるのも、魅力のひとつだろう。
セソコさんが思う、暮らしを「装う」とは?
まだオープンして1年足らずではあるが、さっそくこの店で挑戦していきたいこともあるそうだ。
「買い物の仕方として、もののクオリティだけでなく、あの人から買いたいという気持ちも大事になってくると思うんですよね。仕入れのときの写真をしっかり撮らせてもらって、POPも充実させて、雑誌のように作家さんのことを紹介するお店にしていきたいです」
最後に、この店の名前である「島の装い。」の由来を聞いた。
「お皿でもなんでも、買おうと思えばどこでも買えますよね。でも、やちむんを使ってみようよとか、ちょっと花を飾ろうよとか、暮らしの中で“装う”という気持ちを持ったなら豊かになっていけるんじゃないかなと思って。今は〈島の装い。STORE〉ですけど、これから〈島の装い。CAFE〉とか、いろいろ広げていきたいですね」
10年後とか20年後にも自分たちの暮らしのそばにあってほしいものを選んでいるというセソコさん。「そうすると自然と、環境にも体にもいいよね、みたいな長い視点で選んでいる」と語っていた。一時的な買い物でなく、作り手やお客さんとの関係も、彼だからこそこれまで長く築いてきたものが、ここからさらに長く繋がっていくのだろう。