沖縄県那覇市の中心部。昔から、“やちむん(焼き物)”で知られる町・壺屋に、ちょっとユニークな複合施設〈SHAREtsuboya〉が誕生した。設計と運営は若手建築家のクマタイチ。
これまでは都内のシェアハウスを複数手がけてきたが、築50年のビル一棟リノベとなる今回は、明るい2階をシェアオフィスに、静かな3階をゲストハウスとした。こうすればユーザーは、両方を一緒に借りて、沖縄出張や短期滞在の拠点にすることもできるからだ。
どちらも「つぶれた菱形みたいな、でも不思議と心地いい」という建物の形を生かした空間。窓の外を見れば、はす向かいには古い市場をリニューアルした施設があり、昔からここをたまり場にしていた地元っ子や、焼き物目当ての観光客が行き交っている。
次の課題は、そんな賑わいに面した1階をどうするか。「ハードとしての建築はもちろん、コミュニティをつくる装置としての建築に興味がある」と語るクマは、多くの人が訪れたくなるだろう“酒にまつわるマーケット”を計画。
旧知の酒店〈LIQUID〉のオーナーに相談し、酒を飲む/買うだけでなく、自家製ソーセージ店のブースや現代作家の酒器を扱うギャラリーも同居する、小さな商店街のような店を考えた。
改築にあたって意図したのは、町並みに馴染む外観を保つこと。屋上階を囲む沖縄特有の“花ブロック”や古い柵のある窓は残し、1階外壁だけを優しいグレーで塗り直した。
「ただし内装は思いきりクールにしました。棚の骨組みやスペースの仕切りには、工業的なLアングル(L字形鋼材)を採用。壁の塗装はコンクリートに近いハードなグレーです」
建物は昔馴染みの佇まいだが、開口からチラッと見える店内がカッコよくて、思わず中を覗きたくなる。
「おもしろいことや人との出会いを引き寄せる場所をつくりたい。昔の市場みたいにいろんな人が行き来する場所でこそ、自分の想像を超える仕事が生まれる気がするんです」