創業175年の老舗が泡盛の常識を覆す
創業1848年。那覇・首里〈瑞穂酒造〉は県内で2番目に長い歴史を持つ酒造所。泡盛で有名な一方で、昨今は仲里彬さんを中心に、ジンやラムといった他の蒸留酒を製造して、IWSC(世界三大酒類コンペティションの一つ)で金賞などに輝く。その彼が、村上さんをクリエイティブディレクターに迎えて立ち上げたプロジェクトが「ONERUM」。
「沖縄の離島8島で生産される黒糖を原料に、テロワールを生かしたラムを製造します。きっかけは市場縮小に悩む、島の黒糖産業を助けたいとの思いからでした」と仲里さん。
村上さんはその情熱、酒造りの確かな技術と知識にも感心したと言う。「泡盛の消費量の減少にも危機感を抱いた仲里さんが開発し、2022年に発売された《MIZUHO DISTILLERY BEYOND 2022》。僕はこれを飲んで、泡盛の未来を感じました」
村上さんいわく、その魅力は長期熟成の甘美な味わいと、新酒のフレッシュな風味が共存する飲み口。「一般的な泡盛は泡盛酵母を使用し、1回の蒸留で造られます。しかし仲里さんは、発酵工程で黒糖酵母を採用。蒸留も複数回重ね、黒糖酵母仕込みが持つ甘い風味を、さらに研ぎ澄まされたフレーバーに変えました」
結果生まれた、バニラやカラメルに似た甘い風味。この前例のない飲み口こそが泡盛の窮地を救うかもしれない。村上さんは《MIZUHO DISTILLERY BEYOND 2022》をブラッシュアップしようと持ちかける。
「今回発売する《The MIZUHO》は、カラメルの風味がより濃厚に。ラベルも沖縄の建築に多用されるコンクリートを使った作品をモチーフに、デザインしました。〈瑞穂酒造〉の175年の技術が凝縮された一本には、可能性が満ちています」
The MIZUHO
ショップ名:LIQUID
価格:5,500円
IWSC 2023金賞を受賞した《MIZUHO DISTILLERY BEYOND 2022》を改良。さらに熟成させた黒糖酵母仕込みの甘い風味が特徴的な原酒。これが複数回蒸留を経てバニラやカラメルの風味がより顕著になった。また沖縄の彫刻家・能勢孝二郎の作品をラベルに起用。端正なデザインも魅力的な一本。
肉の専門店が作る、新たな沖縄おでん種
那覇から北へ車で約30分。沖縄市の中心市街地・コザに2017年に開業した加工肉食品専門店〈TESIO〉。店主の嶺井大地さんはドイツ製法のソーセージ作りの名手で、ドイツ国際コンテスト・IFFAで最高評価の金メダルに輝いた経験を持つ。
「豚肉は裏の〈普久原精肉店〉が目利きした新鮮なものを仕入れます。すぐに自分たちでスジなどを取り除いて挽き肉にしたら、ブレンドしたスパイスと氷と一緒に機械で切り混ぜて乳化させます。こうして水と油を均一に混ぜ合わせたクリーム状の肉の生地を作るのがドイツ製法の特徴で、これをたっぷりの粗挽き肉と合わせたら、腸詰めにしていきます」
乳化の工程を経ることで、ソーセージの食感は滑らかに。プリッとした弾力も生まれるという嶺井さん。
「嶺井さんとは僕が沖縄に移住した時からの知り合いで、互いの店に互いの支店を出し合うお付き合い。〈TESIO〉の近くには、よく2人で通う沖縄おでんの店があります。沖縄では豚足などの肉が人気のおでん種。でも最近はこの伝統の味わいを提供する店が減ってきています」
一抹の寂しさを覚えた、村上さん。嶺井さんに打ち明けたところ、彼も同じ思いだったという。結果、生まれたのがTESIOのオデン種。〈TESIO〉名物のソーセージに新作の肉ツミレ、そしてドイツ製法の乳化の技術を生かして、ハンペンも豚肉が材料だ。
「クリーム状の肉の生地に卵白を加え、成形したら蒸します。カツオと昆布のだしを吸うので、肉の旨味も相まって滋味深いです」と嶺井さん。
2人はこのおでんとお酒を携えて、全国でポップアップイベント『テキド』を開催、完売御礼を続けてきた。多くの人を唸らせた、沖縄の未来へ紡ぐ味。ぜひ手軽に家庭で楽しもう。
TESIO謹製「肉」オデン
ショップ名:LIQUID
価格:3,240円
1袋にTESIOのスペシャリテであるソーセージ、肉ツミレ、そして肉ハンペンが2個ずつ入る。ジューシーなソーセージに、オリーブ、パプリカ、ドライトマトを練り込んだ肉ツミレ、ふわふわの肉ハンペン、すべて沖縄県産の豚肉を使用。沖縄流でマスタードをつけて食べるのがおすすめ。2袋入り。