版画による新作個展を前に、作品に秘めたテーマを語る
大橋裕之
小田島さんの作品はサニーデイ・サービスのジャケットワークから見ていて、当時、デザインというのを最初に意識したきっかけにもなったと思います。漫画『無 FOR SALE』も参考にしたくて何度も読みましたし、最初の単行本『音楽と漫画』の装丁も小田島さんにお願いしたんですよね。
小田島 等
その後、『シティライツ』の装丁もやらせてもらって。影響を受けたと言ってもらったのは嬉しかったですね。大橋の「大」と小田島の「小」を取って〈大&小〉というユニットを組んで展示をしたこともあったよね。
大橋
美大に行って捨ててある静物画のキャンバスを拾ってきて、そこにキャラを加筆したりしましたね(笑)。
小田島
一瞬のユニットだった(笑)。『ANONYMOUS POP』という作品集も出したように、自分がハウスやテクノの記号性みたいなものに影響を受けていると気づいた頃から、漫画やキャラクターを描かなくなってしまって。今回の作品もテクノ的で、自分の肉筆でなく、レーザーカッターで削った板を使った木版画。コーヒーの版画も、いろんな場所でサンプリングした文字を再構築したファウンドアートであり、グラフィックアートでもあるんです。
大橋
いいですね。このスフィンクスもすごく好きです。これは木ですか?
小田島
そう、これもレーザーカッターでカットした木を組み合わせたもの。すべてステンレス製にしようと考えていたんだけど、木版もそうで、木の良さというのも考えるようになりました。
大橋
わかります。僕も散歩をしながら、よく木を触ったりしていますよ。
小田島
あと白黒の版画って、光と影のように対比するものに終始するなと思って。聖書に「神は光を昼と名づけ、闇を夜と名づけられた」という象徴的な一節があるけど、生と死、戦争と平和も、いつその闇と光が逆転するかわからない。それで死んでいるけど生きているゾンビもモチーフにしました。
大橋
小田島さんの作品はカッコいいし面白いし、アホな遊びもあったりするところが好きなんですよね。自分はコンセプチュアルに考えられないので、そういう作り方がうらやましいです。
小田島
大橋くんは3分以内で完璧なラモーンズなんだよね。ミニマルでストレートで、ある意味メロウでもある。
大橋
そんなにいいものなのかなぁ(笑)。でも、小田島さんにこうだよねと言ってもらえるのは嬉しいですね。