北海道・帯広~釧路の旅。触れて、感じて、食べる道東

北海道は広い。限られた時間を最大限活用して、思う存分楽しむには、2つの空港間をレンタカーで移動するONE WAYトリップがおすすめだ。今回、おすすめするのは帯広空港〜たんちょう釧路空港。食料自給率216%の北海道で“おいしい”までの道のりに触れる。2泊3日で巡るちょっとニッチなドライブ旅の提案。

photo: Aoi Kambe / text: Maya Nakamura

道東はおいしくて楽しい。そして、住んでみないとわからないニッチな名所があちこちに潜んでいる。十勝在住の私が実際に通ったり友人を連れていったときに沸いたスポットの中から、帯広空港からたんちょう釧路空港までレンタカーで駆け抜ける2泊3日の欲張りなプランを紹介。

【旅程】

Day1 帯広・中札内・更別・清水
10:00 〈六花の森〉で庭園探索
12:00 〈かっこう料理店〉でランチ
14:30 〈ELEPHANT IN THE ROOM〉で一息
15:30 〈グリーン商会〉で掘り出し物探し
17:00 〈十勝ワッカの森キャンプ場〉でグランピング

Day2 広尾・白糠
  9:00 〈満寿屋 麦音〉で朝ごはん
10:30   昆布漁師体験・フンベの滝・海最高
12:00 〈Bay Lounge Coffee〉で海鮮ランチ
14:00 〈菊地ファーム〉で酪農体験
17:00 〈茶路めん羊牧場〉〈チーズ工房白糠酪恵舎〉
18:00 〈ファームレストラン クオーレ〉でディナー
22:00 〈ホテルまつや〉宿泊

Day3 釧路・津別
  9:00 チェックアウト
10:00 〈和商市場〉〈 フィッシャーマンズワーフMOO〉でお土産
12:00 〈BASE9〉〈JIRI〉でショッピング&カフェ
14:00 〈シゲチャンランド〉でアート鑑賞
16:00 〈山の宿 野中温泉〉
17:30 空港でスパカツ飲み

Day1 おだやかな十勝の雰囲気を味わう

せっかくの北海道、午前到着便でくる人も多いだろう。そのときは、まず〈六花の森〉に向かってほしい。レーズンサンドで有名な製菓メーカー〈六花亭〉の世界観が楽しめる唯一無二の施設。四季折々の草花が楽しめる広い庭園を散策できるほか、自然の中の美術館は、ショップ・レストランを併設し〈六’café〉では、ここでしか食べられない作りたてバターサンドが味わえる。

朝のお散歩のあとは〈かっこう料理店〉でお昼ごはん。畑の一角にぽつんと建てられたのどかな雰囲気のお店で、十勝の旬の食材を使用したコース仕立ての料理が味わえる。友人をこのお店に連れていくと、皆、リピートしたいと言う。そんなおいしい信頼があるお店。大人気なので予約はお忘れなく。

車を走らせること約20分、帯広市街の〈ELEPHANT IN THE ROOM〉へ。私が足繁く通う店には世界中から集められた古着やファブリック、花瓶やコップなどの小物がずらり。魅力的な人やモノが集まり一期一会の出会いがあるお店。〈Altec〉のA7というヴィンテージスピーカーからはアンビエントやフォーク、ジャズが流れる。そんな心地いい空間でホッとひと息。オリジナルの調合でスパイスから時間をかけて煮出した濃厚なチャイや、カシオペアコーヒーのオリジナルブレンドのコーヒーも絶品。テイクアウトもできるので次の目的地へのお供にも。

次に、ラブホテルの斜め前でただならぬ雰囲気を醸し出している〈グリーン商会〉。一見倉庫のようだが、知る人ぞ知る古物の穴場。全国から入ってきた古物が外まで溢れている。ソファやテーブルといった大型家具のほか、地球儀や火鉢、古本まで幅広いラインナップ。360度見渡す限り古物がぎっしりと詰まっていて、掘り出し物を目当てについつい長居してしまう。

〈セイコーマート〉や〈道の駅おとふけ〉でビールやつまみを買い込んだら〈十勝ワッカの森キャンプ場〉へ。ここは北海道ならではのブドウの品種「山幸」などを使ってナチュラルワインを製造している〈相澤ワイナリー〉がプロデュースしたグランピング施設。希少な道産ワインを飲みながらドームテントでは幻想的な自然の中でゆったりと過ごせる。テントサウナやドッグランも楽しめるちょっとラグジュアリーなグランピング。

Day2 生産者を巡る。ひと味違った大人の職業体験

宿泊した施設の朝食もいいけれど、せっかくだからいろんなお店でいろんな十勝を味わいたいという欲張りさんには〈満寿屋 麦音〉の十勝産の小麦100%パンがおすすめ。朝6:55から営業していて、十勝の小麦でつくったパンを小麦畑を眺めながら食べられる。地元民から愛されるこの味は、十勝に来たら抑えておきたいところ。

少し足を延ばして約1.5時間、十勝の最南端・広尾町へ。北海道の中でもあまり知られていないコアな町だが、山海川が揃い、鹿やキツネといった野生動物との遭遇率が高く自然との距離が近い。一次産業者も多く、実は結構面白い。

体験してほしいのは、昆布漁師や酪農家、猟師などの仕事場に潜入する一風変わったピロロツーリズムの生産者ツアー。昆布漁師体験なら、意外と重い生の昆布を昆布浜に干してみたり。酪農体験なら、牧草地に入って牛と戯れてみたり。天気や時期によってツアーの内容は少しずつ変化するが、それもまたリアルで面白い。


十勝に赤潮が来て海の様子がおかしいこと、牛乳の消費低迷による生産抑制などで経営が厳しく離農が増えていること。生産者の生の声は決して明るくて楽しい話ばかりではないが、食材をいただく消費者としては知っておきたい知識が満載。実際に自分が牛や昆布や鹿などに触れることで、考えるきっかけを与えてくれる。第一次産業の仕事場に踏み込む“ド”ローカルなひとときは忘れられない体験となるだろう。

身体を動かしたあとのご飯はうまい。ランチのおすすめは広尾町の水産加工会社が経営する〈bay lounge coffee〉のボリューム満点で地元の海の幸が楽しめる海鮮ランチ。もしくは、麺から広尾町で作られている町中華の〈王府(ワンフー)〉の蒸し焼きそばが推し。

体験後は白糠方面へ。羊の飼育から製品の販売までを手がけている〈茶路めん羊牧場〉で羊を見学(要予約)したり、車で5分程度のところに位置する〈チーズ工房白糠酪恵舎〉の見学も面白い。もし胃袋に余裕があれば、ホエイを使用したソフトクリームに、リコッタチーズの塩漬け「リコッタサラータ」をトッピングしたヨーグルトのような酸味がさっぱりと美味しい『チーズソフトクリーム』もぜひ食べてほしい!

次はお楽しみだった〈ファームレストラン クオーレ〉でディナー。〈茶路めん羊牧場〉が手掛けるだけに自社の羊や〈チーズ工房白糠酪恵舎〉のチーズはもちろん、シェフ自身が採ってきた天然のキノコや山菜といった白糠の食材をたっぷり使用。テロワールを感じるイタリアンはアラカルトもコースもどちらも絶品。料理に合わせるペアリングもおすすめ。このお店では絶対にお酒(特にワイン)が飲みたくなるので、宿泊はタクシーで10分程度の場所にある〈ホテルまつや〉などに素泊まりがいいかも。

Day3 釧路と津別。アートに触れる

釧路といえば、好きなお刺身をもりもりのせて食べる〈和商市場〉の「勝手丼」が名物。王道と分かりつつもやっぱり勝手丼はハズせない!和商市場で働く現場の人の胃袋を掴む〈大内商店〉の惣菜をプラスするのもまた面白い。そして、市場からほど近い複合商業施設〈フィッシャーマンズワーフMOO〉では、生きているカニのUFOキャッチャーや北海道ガチャなどシュールなものが並ぶ。旅の思い出になるちょっとした無駄遣いもまた楽しい。

〈フィッシャーマンズワーフMOO〉から徒歩5分圏内にあるカフェ〈BASE9〉のスパイスたっぷりの「キャロットケーキ」や〈JIRI〉の1日50個限定の「霧のプリン」も美味。この土地でしか味わえない甘味も楽しんで。

釧路グルメを満喫したら、神妙で刺激的なアート体験を求めて、釧路市街から1時間半ほどの津別町にある〈シゲチャンランド〉へ。倉庫や牛舎など牧場の跡地に残された建物や作品のために建てた小屋など、合計15個にも及ぶ赤い建物の中におびただしい数の作品が展示されている。森や海などで収集した動物の骨を使ったオブジェだったり、日記を漢字5文字くらいで表現したコラージュだったり、雰囲気の異なるいろんな“シゲチャン”の作品が各部屋ごとに楽しめる。なにを感じるかは人それぞれだが、自由な感性に痺れるものがある。

もしまだ時間に余裕があるようだったら、車で20分ほどの野中温泉で癒やされて。最後は気を引き締めて約1時間のドライブ。たんちょう釧路空港に少し早めに入って、〈レストランたんちょう〉で釧路名物のスパゲッティの上にカツがのった「スパカツ」を。旅の疲れを労いつつ、旅の締めに乾杯するのはどうだろう。