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ワット・ポーを眺めながら、タイの伝統料理を新解釈で味わえる〈Nusara〉

旅先でまずやりたいことと言えば、人気の観光スポットを訪れること、そして、現地の伝統料理を食べること。その2つを同時に叶えられる場所があったとしたら……?

photo: Satomi Matsui / text: Chinami Hirahara

夜空の下、美しく輝くバンコクの象徴、ワット・ポーの伽藍(がらん)が目の前に広がる。幻想的な光景を前に味わう食事は、実にドラマティック。バンコクには特色あるレストランが数多いが、中でも最も旅情を掻(か)き立てるのが〈ヌサラー〉だ。

幼少期にシェフのトンさんが祖母と囲んだ食卓の記憶が料理のインスピレーション源。店名は祖母の名に由来する。全12皿前後のコースには、レッドカレー、トムヤムクン、トムカーガイなど伝統的なタイ料理が並ぶが、実際に運ばれてくる皿は意外なものばかり。

例えばゲーンプー。タイ南部の定番カニ入りイエローカレーで、極細米麺センミーを添えるのが一般的だ。しかし、ここではスパイシーで濃厚なカレーの上に揚げたクリスピーなセンミーをのせ、チリ、ターメリック、バイチャップルー(ハイゴショウ)のパウダーを振りかけてカラフルに。

ストリートフードの代表格ガパオは、サシの美しいステーキとともに。気取らない普段のタイ料理が、シェフの遊び心でモダンに再構築され、特別な一皿へと昇華。

シェフの弟でソムリエのタムさんが厳選するワインは、タイのワイナリーからも積極的にセレクト。タイならではの地酒のセレクションもあり、料理とのペアリングも楽しい。

旅のハイライトとして、築50年を超える趣ある一軒家レストランでタイの伝統の新しい形を五感で堪能したい。