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暮らす

こんなところに農園。表参道〈eatrip soil〉

野菜や果実を採ってすぐに食べる。そんな理想郷は、都会のど真ん中や家の近所でも作ることができる。ほんのちょっとのスペースで繰り広げられる大自然の神秘。そこはいつしか人が集まるサードプレイスとなる。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Michiko Watanabe

都会の真ん中の空中農園で知る、
自然のリアルと豊潤な恵み。

Q

始まりのきっかけ。

野村友里

表参道〈GYRE〉ビル4階が、〈GYRE.FOOD〉に生まれ変わる際に誕生。店名の「soil」は土という意味。土という字は+(プラス)−(マイナス)って書くでしょ。イコール0。裸一貫、ゼロになっても、土さえあれば、生活を一から自分の手で組み立てていける。そんなイメージを持つためにも土が必要だった。

〈eatrip soil〉は、ただモノを売るだけではなくて、そのモノが生まれる環境や、作り手たちの考えを伝えたいと開いた店。土と空があれば、彼らとつながっている感覚が共有できる。ここはビルの4階だけど、土の中にいるような感覚にしたくて、内装もそうお願いしました。

Q

畑がある意味。

野村

ともかく、子供たちが居つく(笑)。虫捕り網を持って、毎週やってくる子もいます。土の深さは40㎝ほどしかないんだけど、“おいしい”土と植物があれば虫が来る。虫が来ると鳥が来る。

あるとき、ジョロウグモが大きなクモの巣を張ったんです。その巣に、繭のようなものがいくつも見える。中には脚がはみ出しているものもあって、子供たちもその親も、そこからクモの子が生まれると思って、固唾を呑んで見ていたの。ところが、それは単にクモが餌として確保しているものだとわかったときの、みんなのショックね。都会の真ん中で、自然界の強烈な現実に触れた(笑)。一方、土の中では、強い根っこがのさばる弱肉強食の世界が広がる。日々驚きの連続。

Q

なにが採れる?

野村

レモン、ブドウ、ユズ、イチジク、ビワ、ロマネスコ、セロリ、オリーブ、ハーブ類など、数十種類かな。驚くほど、いろんなものが採れる。堆肥の中に入ってる種から発芽するものもあるから、なにが出てくるかわからない。畑は予期せぬことばかり。それが楽しい。

枯れちゃって、もうダメか、明日抜こうと思っていたら、ひゅっと芽が出てきたり、抜こうとするとものすごく根が広がっていたり。ビルって広がりのある根っこがないけど、大丈夫なのかと思ってしまう(笑)。

Q

どう使う?

野村

食べます、食べます。ワークショップのときに調理をして出したりもします。この間、ブラックベリーが10㎏も採れたので、半分はアイスやジャムにして、残り半分は染色に使いました。食べきれないものは堆肥に回すことも。

Q

これからどうする?

野村

どうなるのかしら(笑)。流れに任せて。でも、種採りは続けたいと思ってます。枯れても死んでるわけじゃない。次の命が宿っている。死ぬのも生きるのも同じ感覚。畑はいろんなことを教えてくれます。

〈eatrip soil〉表参道の空中農園
気持ちのいい朝、畑では、〈eatrip soil〉店長と企画担当の岡崎姉妹と野村友里さんの3人のおしゃべりの花が咲く。風が流れていく。