最新までのいきさつ
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1950年代:
ハワイが観光業でブームに。コンドミニアムが長期滞在の選択肢の一つに。
1973年:
会員制リゾートホテルを手がける〈リゾートトラスト〉が創業。(1)
2014年:
〈Airbnb〉が日本へ進出。民泊が長期滞在の選択肢に加わる。
2018年:
〈ヒルトングランドバケーションズ〉が日本初のタイムシェアーリゾートをオープン。(2)
2018年:
旅館業法が改正。一部の場合で、無人チェックインが可能に。
2022年:
ホテルにも家にも別荘にもなる、〈NOT A HOTEL〉がはじまる。
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ITが叶えたのは、
国内外のさまざまな場所に暮らし、
滞在できる仕組み。
話を聞いた人:濱渦伸次(NOT A HOTEL代表取締役CEO)
BRUTUS
〈NOT A HOTEL〉は、これまでのホテルとどのような違いがありますか?
濱渦伸次
住宅や別荘として所有しながら、ホテルとして他人に貸すこともできる。そんな新しい暮らしの拠点を作ろうとはじめたのが〈NOT A HOTEL〉になります。
これまでもリゾートホテルのタイムシェアープログラムなど同じような仕組みはありましたが、僕たちはSUPPOSE DESIGN OFFICEの谷尻誠さんと吉田愛さんをはじめ、優れた建築家に設計を依頼した、唯一無二の特別な居住体験ができる建物を販売。
それを1棟丸ごと購入して住むこともできますし、年間30日の利用を下限としたシェア購入もできる仕組みです。どちらの場合でも自分が使わない日は一般の人にホテルとして貸し出すことができて、それによって収益を上げることもできます。
従来のホテル事業は銀行から融資を受けて建物を造り、それを稼働させながら銀行にお金を返していくやり方でした。〈NOT A HOTEL〉はそれとは真逆で、先に建物を設計し、CGの段階で販売を行い、完売したら建てるという手法をとっています。
2021年9月に販売を開始したところ、1棟も建っていないにもかかわらず、2ヵ月で完売してしまった建物もあります。
BRUTUS
サービス面では、これまでのホテルとどのような違いがありますか?
濱渦
前職ではエンジニア兼デザイナーとして会社を経営していたこともあり、〈NOT A HOTEL〉でも8億円の家をサイト上の購入ボタンから買えるようにしたり、ホテル利用の時に無人に近い状態でも成立するようなサービスの仕組みを導入したりしています。
例えば、ドアの解錠はスマホで行えますし、各建物にはQR決済できるオリジナルの冷蔵庫を設置して、飲食物や備え付け以外のアメニティなどが購入できる予定です。何より家自体が販売して終わりではなく、建ったあともアップデートしていきます。
BRUTUS
〈NOT A HOTEL〉によって、今後実現してみたい世界を教えてください。
濱渦
現在は自然に恵まれた宮崎と那須の建物が進行中ですが、今年は福岡など都市型の建物も造る予定です。さらに2025年までには北軽井沢や熱海、沖縄、北海道など全国30ヵ所に広げていきますし、海外も視野に入れています。
〈NOT A HOTEL〉の強みは、一つの建物のオーナーであれば、自分が所有する日数を使ってほかの建物にも住めること。建物にはランクがあり、同ランクであれば差額なしで宿泊できます。つまり新しい建物ができるたびに自分の家が増えていく感覚になるはずです。
家の購入はいろいろな意味で重いことですし、個人的に一生一ヵ所で過ごすのはイヤだったので、いろいろなところで暮らせる新しいプラットフォームを作りたかった。住む場所が一つの時代は終わり、いろいろな場所に家がある世界を〈NOT A HOTEL〉で楽しんでもらえたらと思います。