お祭り評論家・山本哲也が語るニッポンの夏祭り!せっかく行くなら踊らにゃ損

今夏は全国各地で「ニッポンの夏」らしい夏が帰ってきそうだ。祭り好きたちは血をたぎらせているに違いない。そこで参加する側のプロフェッショナル、お祭り評論家の山本哲也さんに、今夏復活する祭りの推しを尋ねた。

edit&text: Kaz Yuzawa

BRUTUS

まず、山本さんがお祭りにハマったきっかけを教えてください。

山本哲也

学生時代にオフ会の「青森ねぶたオフ」に参加したんです。興味本位だったんですが、実際に行ってみたらハマってしまいまして。

BRUTUS

大阪出身でねぶたですか?

山本

そうなんですよ。大阪にはだんじりという勇壮なお祭りなどいろいろなお祭りがあるんですが、誘われるほど親しく地域に所属したことがありませんでした。ですから、人生で初めて本格的に参加したお祭りが『青森ねぶた』だったんです。

BRUTUS

ねぶたのどこにハマった?

山本

ねぶたはハネトという踊り手役で見物人も参加できるんですが、体力の限りハネているとトランス状態になって頭が空っぽになるんです。思考にリセットがかかると言えばいいのか、それが最高に気持ちよくて。

BRUTUS

その感覚が忘れがたく、ついにはお祭り評論家に?

山本

そんな感じです。お祭り好きの人はよく「我が町の祭りが一番」と言いますが、私にとっては『青森ねぶた』が特別な存在になったんです。今年は3年ぶりにハネトの一般参加が解禁される予定です。

『青森ねぶた』
写真提供:(公社)青森観光コンベンション協会

BRUTUS

以来、いくつぐらいのお祭りに行ってきたんですか?

山本

正確に数えているわけじゃありませんが、少なくとも300は超えていると思います。

お祭り評論家のイチオシは、
郡上市名物の二大盆踊り。

BRUTUS

では、山本さんのイチオシの復活夏祭りを教えてください。

山本

日本三大盆踊りの一つである『群上(ぐじょう)おどり』です。同時期に開催されるお隣の『白鳥おどり』と併せて、岐阜県郡上市の二大祭りをイチオシとしたいと思います。

BRUTUS

その2つを薦める理由は?

山本

私が考える祭りの醍醐味は、「賑やかなお祭りであること」「誰でも参加できること」「着物や浴衣を着る機会があること」の3点ですが、この2つのお祭りはまさにピッタリはまっていて、参加一択、踊ってなんぼのお祭りです。浴衣に下駄が正装のようになっていて、レンタル店が充実しているので、予約することをオススメします。下駄のカランコロンという音がお囃子(はやし)と相まって踊りをさらに盛り上げてくれます。

BRUTUS

特徴を教えてください。

山本

まず、7月上旬から9月半ばにかけて毎日のように各町内持ち回りで開催される点が挙げられます。これほどのロングラン開催はほかでは見られない特徴だと思います。そして最高潮に達するのが、お盆の時期に開かれる「徹夜おどり」です。郡上が13日から16日の4日間、白鳥は12日が前夜祭で、13日から15日の3日間。コロナ禍前には2つの祭り間を往復するシャトルバスが運行していたのですが、今年は25時までの短縮開催でシャトルバスの運行も見送られたようです。2つのおどりは曲調がかなり違うので、シャトルバスで行き来してそれぞれのおどりを楽しめれば最高なんですが。

BRUTUS

まだ通常開催ではないんですね。

山本

そうです。言ってみれば郡上は、年に30夜以上踊るほど踊りを愛してやまない土地柄なんですよ。400年前に城主が士農工商の融和を図るために「身分の隔てなく無礼講で」と奨(すす)めたことが、オープンな雰囲気を生んだといわれています。

BRUTUS

ほかにオススメは?

山本

有名どころでは3年ぶりの開催になる『高知よさこい祭り』。今年は『2022よさこい鳴子踊り特別演舞』としての縮小開催ですが、全国のよさこい好きにとっては待ちに待った再開だと思います。

BRUTUS

よさこいも阿波踊り同様、全国に広がってますしね。

山本

大学のサークルも多いようです。今の3年生にとっては学生生活唯一の本番になる可能性が高く、熱が入っているはずです。

BRUTUS

なるほど。それは楽しみですね。

写真提供:(公社)高知市観光協会

山本

地域型の小さなお祭りでは、東京都大田区という都会の真ん中で開かれる『厳正寺水止舞』と岡山の山奥のお寺で開催される『両山寺護法祭』の2つは、ニッポンの奇祭と言ってもいいユニークなお祭りなので、ご縁があればぜひ行かれることをオススメします。

写真提供:大田区観光課
写真提供:美咲町

BRUTUS

では最後に、お祭りに参加するための心得を教えてください。

山本

当たり前のことですが、衣装や申し込み登録といった準備を怠らないこと。地元の人の言うことをよく聞くこと。参加するにせよ、見物するにせよ、現地では一日氏子という意識を持っていれば、間違いはないと思いますよ。