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新しい体験に出逢う旅。佐渡島の廃校を再生した酒蔵〈学校蔵〉で、1週間のディープな酒造り体験を

豊かな自然と文化が溢れる日本最大の離島・佐渡島で、廃校が酒蔵〈学校蔵〉として蘇った。国内外から、日本酒愛好家が訪れるサステイナブル・ブリュワリーでの学びとは。

photo: Kazuharu Igarashi / text: Hiromi Shimada

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佐渡島で酒造りを学ぶ

金銀山をはじめとする山々が連なり、島の中央には広大な田園風景が広がる佐渡島。生態系の多様性に加え、長い歴史の中で育まれた独自の伝統から、「日本の縮図」ともいわれるほど豊かな文化を持つ。

その唯一無二の地に根ざす1892年創業の老舗酒蔵〈尾畑酒造〉が2014年から運営する〈学校蔵〉。廃校舎の元理科室を冷房完備の仕込み蔵に改修し、冬の気温と同じ環境を再現することで、醸造期間外の夏の酒造りを実現した。

この独自の取り組みを通じ、多くの人に佐渡の魅力も知ってもらおうと、学校=学びの場として始めたのが「1週間の酒造り体験プログラム」。製麴(せいきく)や三段仕込みといったディープな蔵人体験ができ、今や世界中の日本酒ファンが予約待ちするほど人気を集めている。

「私たちが提供するのは、おもてなしではなくリアルな酒蔵の仕事のおすそ分け。そこで異文化交流もでき、いくつになっても成長できる学びの喜びが得られる、まさに学校のような酒造り体験です」と話すのは、5代目蔵元の尾畑留美子さん。参加者には、酒造り以外の時間は自由に地域を巡り、地元の人や食、環境と触れ合ってもらうことで、佐渡のファン作りにもつなげている。

「学校で同級生ができ、地域の“ご近所さん”も増え、ここがいつでも帰ってこられる母校になったら」。佐渡の魅力を磨き、その価値を見出す人々をつなぐことで、人も循環する。サステイナブルな酒造りの可能性はまだまだ広がっていく。

貴族・武家・町民文化が融合する多様性も魅力

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