無駄な機能こそ愛おしい、昭和のデジタル腕時計
1980年代のジャパニーズシティ・ポップや昭和歌謡の名曲の数々をアップデートしながら、「シティ・ポップ」ブームの立役者の一人となった、韓国発のプロデューサーでDJのナイト・テンポさん。
昭和に活躍したアーティストのカセットテープを1500本以上コレクションしていることでも知られ、さまざまなレトログッズを蒐集している。好きになったものはとことん集めてきた彼は、80年代の日本製デジタル腕時計のコレクターでもあり、韓国の自宅ではなんと200本保管しているという。
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〈CASIO〉GS-20 Super Windsurfing
1980年代のものと思われるチープカシオ。アラームなどの基本的な機能は兼ね備えつつも、画面右ではサーフィンゲームができる。〈CASIO〉GS-20 Super Windsurfing
1980年代のものと思われるチープカシオ。アラームなどの基本的な機能は兼ね備えつつも、画面右ではサーフィンゲームができる。 -
〈CASIO〉データバンク ミクロコスモス
スケルトンのボディがかっこいいこの時計には、テレメモ(電話番号等記憶)、スケジュール、計算機、ワールドタイム、ストップウォッチなどの機能が搭載。電話帳が必須だった当時は、とても画期的なアイテムだった。〈CASIO〉データバンク ミクロコスモス
スケルトンのボディがかっこいいこの時計には、テレメモ(電話番号等記憶)、スケジュール、計算機、ワールドタイムなどの機能が搭載。電話帳が必須だった当時は、とても画期的なアイテムだった。 -
〈ALBA〉デジタルキャラクターウォッチ
うる星やつらのデジタル時計。このシリーズはセーラームーンやほかのキャラクターも。「状態があまりよくなかったので、500円で購入できました。箱に入ったままカビていたので、ベルトは自分で付け替えています」〈ALBA〉デジタルキャラクターウォッチ
うる星やつらのデジタル時計。このシリーズはセーラームーンやほかのキャラクターも。「状態があまりよくなかったので、500円で購入できました。箱に入ったままカビていたので、ベルトは自分で付け替えています」 -
〈CASIO〉 DKW-100「漢字データバンク」
数字やカタカナなど簡単な文字しか表現できなかったのが、液晶の技術が発達したことで、漢字まで再現できるように。この時代にとって、難しい字が打てることは、とても革新的な機能だったのだ。〈CASIO〉 DKW-100「漢字データバンク」
数字やカタカナなど簡単な文字しか表現できなかったのが、液晶の技術が発達したことで、漢字まで再現できるように。この時代にとって、難しい字が打てることは、とても革新的な機能だったのだ。 -
〈NELSONIC〉ゼルダの伝説 ゲームウォッチ
1989年、中国製。このシリーズは当時スーパーマリオやスター・ウォーズのものも発売されていた。「元々プラスチックバンドですが、古いものだったので自分で新しいバンドに替えました。ゼルダのゲーム機能がついていますが、一度もクリアできたことがないです(笑)」〈NELSONIC〉ゼルダの伝説 ゲームウォッチ
1989年、中国製。このシリーズは当時スーパーマリオやスター・ウォーズのものも発売されていた。「元々プラスチックバンドですが、古いものだったので自分で新しいバンドに替えました。ゼルダのゲーム機能がついていますが、一度もクリアできたことがないです(笑)」
「子供の頃から〈カシオ〉や〈オリエント〉の時計にずっと憧れていました。当時、韓国では日本ブランドの時計の流通が少なかったので、なかなか手に入らなかったんです」
80〜90年代の日本のデジタル腕時計を買い始めたのは大人になってから。日本を旅しながら、全国の時計店を回って〈シチズン〉やチープカシオを中心に集めている。
「東京だけでなく、横浜や大阪、福岡などの古い時計店はほぼ全て行きました。マップアプリで検索するときは、『時計屋』よりも英語で『Clock Shop』と入れたほうがよい時計屋さんが出てくるんです。ほかにも商店街にある時計店は穴場。ネットオークションもよくチェックしています」
数あるコレクションのなかで、普段身につけることが多いのは〈シチズン〉の80年代頃(推定)のデジタル腕時計だと話す。
「6年前に大阪にある動物園前の時計店で、この『DQ-5012』を手に入れて以来〈シチズン〉をよく集めるようになりました。ストップウォッチやアラームなど、機能はいたってシンプルですが、メタリックなデザインがお気に入りです」
古いものとなるとどうしても気になるのが、故障や内部の状態。しかし、エンジニアをしていた経験のあるナイト・テンポさんにとってはお手の物だ。
「壊れているジャンク品も、すべて自分で修理しています。この時計もバンドを何回も替えながら大切に使っている一本。お店で買うときは、壊れていてもいいのでとにかく綺麗なものを選ぶようにしています」
「この時代のデジタル腕時計には、ゲームや無線機、バイオリズムや演歌が流せるものなど、いい意味でいらない機能が一本一本に搭載されています。なくても困らないその機能が愛おしい(笑)。集めていて飽きないし、デザインから漂うオーバーテクノロジー感も手元に置いておきたくなる理由の一つです」
技術が発達し、他企業よりも多機能でデザイン性の高いデジタル時計を、と競争し合ったこの時代。〈セイコー〉や〈CASIO〉をはじめ各ブランドは、技術力の象徴として自社渾身の機能をそこに詰め込んでいた。一見無駄にも見えるその機能に、ブランドの誇りと時代を感じることができるのだ。