Wear

Wear

着る

所持数、200本超!Night Tempoが蒐集する、レトロフューチャーなデジタル腕時計

11月1日発売のBRUTUS「それでも欲しい時計、どれですか?」では、日本製デジタル腕時計を集めるナイト・テンポさんにお気に入りの一本について話を聞いた。今回は、本誌では載せきれなかったその珠玉のコレクションの一部を公開!Webだけの拡大版でお届けします。

photo: Koh Akazawa / text: Sho Kasahara

無駄な機能こそ愛おしい、昭和のデジタル腕時計

1980年代のジャパニーズシティ・ポップや昭和歌謡の名曲の数々をアップデートしながら、「シティ・ポップ」ブームの立役者の一人となった、韓国発のプロデューサーでDJのナイト・テンポさん。

昭和に活躍したアーティストのカセットテープを1500本以上コレクションしていることでも知られ、さまざまなレトログッズを蒐集している。好きになったものはとことん集めてきた彼は、80年代の日本製デジタル腕時計のコレクターでもあり、韓国の自宅ではなんと200本保管しているという。

「子供の頃から〈カシオ〉や〈オリエント〉の時計にずっと憧れていました。当時、韓国では日本ブランドの時計の流通が少なかったので、なかなか手に入らなかったんです」

80〜90年代の日本のデジタル腕時計を買い始めたのは大人になってから。日本を旅しながら、全国の時計店を回って〈シチズン〉やチープカシオを中心に集めている。

「東京だけでなく、横浜や大阪、福岡などの古い時計店はほぼ全て行きました。マップアプリで検索するときは、『時計屋』よりも英語で『Clock Shop』と入れたほうがよい時計屋さんが出てくるんです。ほかにも商店街にある時計店は穴場。ネットオークションもよくチェックしています」

数あるコレクションのなかで、普段身につけることが多いのは〈シチズン〉の80年代頃(推定)のデジタル腕時計だと話す。

「6年前に大阪にある動物園前の時計店で、この『DQ-5012』を手に入れて以来〈シチズン〉をよく集めるようになりました。ストップウォッチやアラームなど、機能はいたってシンプルですが、メタリックなデザインがお気に入りです」

古いものとなるとどうしても気になるのが、故障や内部の状態。しかし、エンジニアをしていた経験のあるナイト・テンポさんにとってはお手の物だ。

「壊れているジャンク品も、すべて自分で修理しています。この時計もバンドを何回も替えながら大切に使っている一本。お店で買うときは、壊れていてもいいのでとにかく綺麗なものを選ぶようにしています」

ナイトテンポがコレクションする、デジタル時計
200本を超えるコレクションのなかから、日本に持ってきていた特にお気に入りの7本。

「この時代のデジタル腕時計には、ゲームや無線機、バイオリズムや演歌が流せるものなど、いい意味でいらない機能が一本一本に搭載されています。なくても困らないその機能が愛おしい(笑)。集めていて飽きないし、デザインから漂うオーバーテクノロジー感も手元に置いておきたくなる理由の一つです」

技術が発達し、他企業よりも多機能でデザイン性の高いデジタル時計を、と競争し合ったこの時代。〈セイコー〉や〈CASIO〉をはじめ各ブランドは、技術力の象徴として自社渾身の機能をそこに詰め込んでいた。一見無駄にも見えるその機能に、ブランドの誇りと時代を感じることができるのだ。

No.1019「それでも欲しい時計、どれですか?」ポップアップバナー