アメリカ人男性の理想をさらりと皮肉る。NYのアーティスト、ニック・ドイルが日本初個展を開催

東京での初個展に合わせて初めて日本を訪れたというニック・ドイルさん。代表的な作品の一つはデニム地のコラージュたち。ビジュアルはもちろん、そのスタイルそのものも、彼が制作のテーマの中心に据える「男性性」と深く結びついているという。

photo: Kenya Abe / text: Ryota Mukai

アメリカ人男性の理想をさらりと皮肉る

7、8年ほど前に知人のデザイナーが近所のスタジオを引き払うことになりました。その跡地で見つけたのが大量のデニム。これだ!と思いました。それまでもアメリカを象徴するものとしてパペットの映画や、実際に動く電車を制作していました。そんな頃、デニムほどにアメリカンなものはないと気づかせてくれたんです。

ニック・ドイルの個展『AMERICAN BLUES』
『AMERICAN BLUES』展示風景

強く意識しているのは「男性はこうあるべきだという風潮」。例えばドナルド・トランプは自分の利益のためだけに動き、徹底的な個人主義者で、思いやりに欠ける。でもアメリカにおいては一つの理想でもある。それゆえの居心地の悪さが制作の動機にもなっています。

その理想に押しつぶされて心を病むことはない。むしろ冗談として扱うくらいの感覚で付き合っていけるようになればいいと思うんです。制作も真面目一辺倒ではなく、ユーモアの心を忘れずにいたいですね。