中山秀斗 (竹細工作家)
現代の生活に寄り添う、クオリティの高い仕事
推薦者・日野明子
「普段から使ってみたいと思わせる、自分だけの造形を作り出す人で将来性を感じます。竹編みの職人はたくさんいますが、彼の仕事は本当に丁寧。古典に通じる仕事から、自分で使いたいと発想した道具まで、幅の広さも注目しています」
伝統の技術を用いて
日常使いできる品を作る
編んだ竹に漆を塗り重ねる籃胎漆器と出会い、そこから竹に魅せられていったという中山秀斗さん。「その頃は香川県漆芸研究所にいたのですが、本格的に竹を勉強するために大分へ。伝統工芸の技術を学びましたが、オブジェのような伝統工芸品よりも、もっと今の生活で使うものを作りたいと思って、日々、試行錯誤してます」
細かい部分にもつい、こだわってしまい、一つのデザインが完成するのに3ヵ月から半年程度かかるという。「何度も作り直して考えて。定番品でもちょっとずつ改良を加えています」
広瀬 陽(器作家)
金属にガラス質の釉薬を焼きつけた、静謐な器
推薦者・西坂晃一
「思考も器の表現も、意表を突いてくる作家。風貌や佇まいが飄々としていて、どこか掴みどころがないのが魅力の広瀬さんは、まさに工芸界のニュータイプ。彼の七宝焼の技法を使った器には、人目を引きつける強い引力があると思います。僕も魅せられた一人です」
金属にガラス質の釉薬を焼きつけた
静謐な器
東京・荒川区の住居兼工房で制作する広瀬陽さんの器は、金属に釉薬をかけ、焼成する七宝焼の手法が用いられている。最初に七宝焼と出会ったのは高校時代。「工芸高校の授業で習い、卒業制作も七宝で。その後、入学した美大では七宝焼などの工芸よりも現代美術に夢中に」
卒業後しばらくはアーティストとしての道に進んだが、ふと自分に何ができるか考えた時、七宝焼を思い出した。「僕が目指しているのは工業製品と手仕事の間にあるもの。七宝焼は調度品に使う技法だけど、それを日常の器に使うことに面白みがあると思っています」
湯浅啓司(桶職人)
寧な仕事が使い勝手を左右する、日常の道具
推薦者・日野明子
「ご飯好きの私にとっておひつは必需品。炊きたてよりおひつに移して15分くらい置いた方が断然、おいしい。湯浅さんのものも日常的に使用。内側をペーパーではなくカンナがけをしているので、米がくっつかず使い勝手がすごくいいです」
地元にある杉と竹で作られる
鎌倉時代から続く手仕事
近年、人気が高まっている桶やおひつ。昔からの道具は、理にかなっていることが多く、一度使うとその良さに驚くことも。とはいえ、作れる人が少なくなっているのも事実。木桶、木樽職人の湯浅啓司さんは、そんな時代の希望でもある。
「最初はメーカーで機械で作っていたのですが、手で作る職人に出会い教えてもらえることに。機械だと電気がないとできないけれど、手なら道具さえあればいい。全国どこにでも修理に行けます。木桶は直しながら長く使っていくもの。必要としてくれる人と密に付き合いながら、今後も続けていきたいと思っています」
阿部慎太朗(陶芸家)
今までにない生産スタイルで、新たな陶芸の世界を開く
推薦者・広瀬一郎
「器作家といえば始めから終わりまで一人で作るのが一般的でしたが、彼はスタッフを雇って中量生産をしている。週休2日制にするなど労働条件も明快。個人作家としての魅力のみならず、その製作スタイルが、時代に合っていて革新的です」
西洋のアンティークを手本に
普段の食卓に似合う器を
大学の焼き物サークルをきっかけに陶芸を始めたという阿部慎太朗さん。西洋の中世モチーフが好きというだけあり、型を使って、どこかアンティークな雰囲気のある陶磁器を作る。
「石膏型を作るのも割と好きな作業。中世の食器を参考にすることが多いですが、レモンの絵付けは、香川県高松市にある実家のレモンの木を見て着想。今後は、淡いグリーンなどの釉薬も使ってみたいと思っています。一昨年、ロンドンに行った時、リバティプリントのテキスタイルをたくさん見たので、そのイメージでカラフルなものを作りたいですね」