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設計事務所〈DAIKEI MILLS〉代表・中村圭佑の日用品考:トートバッグ

作られる過程やストーリーに思いを馳せる人もいれば、機能やデザインをとことん追求する人も。生活に溶け込む日用品には、それを選び使っている人自身が滲(にじ)むもの。人がものを語る以上に、ものは人を語ります。


初出:BRUTUS No.928「物語る、日用品。」(2020年11月15日発売)

photo: Keisuke Fukamizu

最もミニマルな表現方法で、個性が浮き出る。ぺらっとしたトートバッグだから面白い

遊休施設を合法的に占拠し、新たな価値を作り上げる活動〈SKWAT〉など、話題をさらう動きをし続ける中村圭佑さん。彼が学生時代から変わらず、こよなく愛する日用品はトートバッグだという。

「レジ袋が有料になる前から、毎日必ずカバンに入れて持ち歩いてます。家に200はあるんじゃないかな。なかでも海外製の柄が長い、ぺらっとしたやつが好み。スタイルが綺麗に見えるし、意外に頑丈なんです。頂き物も多いですが、もともとはミュージアム巡りが趣味で。トートだけはよく買って帰るんです。安くて、旅先でものを入れられてかさばらないなんて、すごく合理的で魅力的じゃないですか」

200あるコレクションの中でも1軍のトートたち。アートフェア『frieze』(中段左から3番目)や、出版社〈MACK〉のノベルティ(上段左から2番目)など。中村さん自身も毎年製作していて、中段左から二番目のトートバッグは5年ほど前のそれ。パターンからこだわり、予算を超えた裏話も。

お気に入りはダミアン・ハーストが経営する〈ニューポート・ストリート・ギャラリー〉の品(上段左から3番目)。建物の外形をかたどったモチーフは、どこか〈SKWAT〉のHPにちりばめられたデザインを想起させる。

「トートバッグのデザインって最もミニマルな表現方法だから、作り手の個性が浮いて出るんです。そこが面白い。大抵は大量生産品なので、形にこだわっていて、かつグラフィックがいいものなんて、そうないんですよね。トートに限らず、“意志を感じられるもの”に惹かれます」