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こんな仕事があったのか!知られざるNHKのつくりかた図鑑

放送局の仕事で、ここまでやるの⁉特定の仕事に特化した驚くべきプロフェッショナルがNHKの番組には数多く存在する。我が道を歩み続けるベテランたちが、自身が専門とする分野について語ってくれました。

本記事は、BRUTUS「NHKのつくりかた」(2025年8月16日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

illustration: Thimoko Horiguchi / text: Ryota Mukai

その発見は世界に轟(とどろ)く⁉『Nスペ エジプト』チーム

『NHKスペシャル「シリーズ・エジプト 悠久の王国」』
総合/2024年3月にプロローグを放送/「透視」によってクフ王のピラミッドに未知の空間を発見。その内部に迫る。最新回「新発見!ピラミッドと王家の秘密」が8月19日に放送予定。司会は俳優・堺雅人。

エジプトのピラミッドに日本の科学技術が詰まった「透視装置」を設置し内部をレントゲンのように透視する番組を継続的に制作しています。

調査結果が科学誌『ネイチャー』で発表され、世界的なニュースになったこともあります。長期にわたる国際科学調査はトラブルだらけですが、ピラミッドの謎を解き明かしたいというロマンがあれば乗り越えられるんです。

カメラとダイビングの二刀流!水中洞窟、沈没船に入る潜水カメラマン

『フロンティア 南大東島 神秘の水中地下世界』
総合/2025年5月10日放送/沖縄本島から約360㎞東方にある南大東島地下の巨大水中洞窟の撮影に挑む。新作『NHKスペシャル 絶海に眠る巨大洞窟~南大東島・驚異の水中世界~』が8月24日に放送予定。

水に関わるすべての撮影を担当しています。潜水チームを持つ日本のテレビ局はNHKだけです。撮影時は2人1組で、撮影・照明を分担。カメラの防水ハウジングを独自に開発しています。

潜水班として働くためには3週間の研修を受けるほか、水深40m以深などより危険な現場に入るには専門のトレーニングが必須になっています。おかげで約60年になる潜水班の歴史で命に関わる事故はゼロなんです。

オンタイム以外に正解はない。『紅白』のタイムキーパー


『NHK紅白歌合戦』
総合/毎年大晦日に放送/国民的音楽番組。ラジオでは1951年から、テレビでは53年からスタート。最初の3回は年始に開催されていた。歴代最高視聴率は63年の81.4%。通算成績は紅組34勝、白組41勝。

番組の進行状況を把握し、時間内に収めるのが私の仕事です。ストップウォッチでコーナーやVTRの尺を計測しつつ秒読みしたり、押し巻きを随時スタッフや出演者に共有したり。始めた当初は職員にさえ「なんの仕事?」と言われたこともありました(笑)。

『紅白』ならトークが長くなったり転換に問題が起きたり、と不測の事態はつきもの。臨機応変な対応とスタッフとの信頼関係が欠かせません。

噴火してもカメラを止めるな⁉西之島を追う火山カメラマン

NHKスペシャル 『新島誕生 西之島~大地創成の謎に迫る~』
総合/2015年8月23日放送/歴史上類を見ない量の溶岩を噴き出し続ける海底火山の噴火により、西之島に新たな陸地が誕生。第一線の科学者たちとともに噴火の模様、植生や水鳥の生息状況を探る。

小笠原諸島の火山島・西之島の変遷と研究者による調査の様子を、4Kカメラや最新のドローンを駆使して、断続的に記録しています。

これまでにも様々な極地や秘境を撮影してきましたが、西之島は常に噴火の危険と隣り合わせという点で特別です。的確なフレームを選び取る「判断力」と、いつでも逃げられる「瞬発力」が欠かせません。逃げるときにも、もちろん、カメラは回したままで。

広大な空間から一点を探し当てる。クラシック番組の録音エンジニア

『クラシック音楽館』
Eテレ/毎週日曜21時から/NHK交響楽団をはじめとするオーケストラのコンサートをメインにした、クラシック鑑賞番組。演奏の魅力をさらに深掘りするアーティストインタビューも。音響は5.1サラウンド。

マイクを適切な場所に置き、録音する音のレベルを調整しながらミックスするのが私の仕事です。中でも、仕上がりを左右するメインマイクはリハーサル中に数㎝単位で調整します。

タイトなタイムスケジュールの中で、コンサートホールの広大な空間にベストの一点を探し当てます。作曲者の紡いだ楽譜を音として再現し、かつ、指揮者が創造する音楽を表現することを大切にしています。

植物の生長を収めるために機材まで開発するカメラマン


NHKスペシャル『超・進化論(1)「植物からのメッセージ~地球を彩る驚異の世界~」』
総合/2022年11月6日放送/最先端の科学が明らかにする「新しい進化の物語」を美しい映像で紹介する大型シリーズ。第1弾は植物。堺雅人×角田晃広×西田敏行らによるドラマも。タイムラプスも活躍!

カメラマンとして撮影するだけでなく、独自に機材を開発することもあります。植物の生長過程を室内で撮影するためのタイムラプスシステムもその一つ。

撮影用のライトで植物が意図せぬ方向に育ってしまうのを防ぐため、植物を育成するためのライト、撮影用ライト、カメラのシャッターの3つのタイミングをコントロールするシステムを開発。長年の経験を形にすることができた出来事でした。

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