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世界中に溢れる「I♡NY」を生んだ街。ニューヨーカーのTシャツSNAP

誰が言ったか、ニューヨークに住む者たちは皆、自身が映画や小説の主人公のつもりで生きているという。かつて世界中に溢れたI♡NYのTシャツを生んだ街で、人々は一体どんなTシャツを着て暮らしているのだろう。

photo: Pete Voelker / text: Shimpei Nakagawa

誰もが一度は目にしたことがあるだろう「I♡NY」。グラフィックデザイン界の巨匠、故・ミルトン・グレイザーが1976年にニューヨーク州の依頼により制作。その後、“I♡NY”とプリントされたTシャツは世界中に溢れた。

実は2023年、州により「WE♡NY」という新たなロゴに刷新されたという出来事があったのだが、地元市民の大反対に遭い、今も街を代表するロゴといえば「I♡NY」のまま。そんな、ロゴにうるさい?ニューヨーカーたちはどんなTシャツを着ているのか。

ニューヨークのタイムズスクエア
みやげ店が並ぶタイムズスクエアで見るのは「I♡NY」ばかりで、 NY中を歩き回っても「WE♡NYC」を目にすることはなかった。

ドキュメンタリーフォトグラファーとして15年以上ニューヨークを見つめ、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』『ヴォーグ』などで活躍するピート・フォルカーとともにドキュメントする。

「I♡NY」Tシャツ
ニューヨークで路上販売される「I♡NY」Tシャツ。コピー品も多いがオフィシャルのものには商標タグが付く。2023年、「WE♡NYC」に刷新されるも、街の答えはやっぱり「I♡NY」。

Erika Bennett(29)クリエイティブプロデューサー
娘のノリと愛犬と地下鉄のプラットフォームで電車を待っていたエリカ。スリフトストアで見つけたという、〈The Misfits〉のフロントマン、グレン・ダンジグのソロプロジェクト〈Danzig〉のヴィンテージTシャツをカットオフ。「正直に言うとバンドのことは知らなかったんだけど(笑)、グラフィックやところどころにある穴、色褪せ具合も含めヴィンテージ然としたその佇まいはノースリーブでもいいかなって。切ってみて正解だったわ」

Twyla Colburn(19)学生
ワシントン・スクエア・パークで姉を待っているトゥアイラ。彼女が一番好きな博物館だというLAのジュラシック・テクノロジー博物館で2023年に購入したミュージアムTシャツを大胆にカットオフ。「もともとのシルエットがタイトで好みじゃなかったことに加えて、最近クライミングをやっているから、そこでも使えたらいいなと思って切ってみたらほかにはない仕上がりで満足してるわ」

Daniel Merrick(23)服飾デザイナー
ストリートバスケの聖地〈ザ・ケージ〉で食い入るように試合を眺めていたダニエル。兄から譲ってもらったというファレル・ウィリアムスのブランド〈ICECREAM〉のヴィンテージTシャツにバッシュというコーディネート。「動きやすさも大事だけど、ストリートバスケはスタイルも欠かせない。先輩たちもユニフォームとはいえ、それぞれの着方にスタイルがあるからね。2024年中に〈ザ・ケージ〉で試合に出られるように、今日もこのあと猛練習さ」

Sergio Rodriguez(21)大学生
プエルトリコ在住で、現在ブラウン大学でサマーインターンをしているセルヒオ。この日はチェスをしにセントラル・パークにやってきた。「ユニークなグラフィックやメッセージが入ったTシャツが好き」と語るように、着ているのは地元のスリフトストアで手に入れた、アメリカで70年代に大ヒットを飛ばしたおもちゃ「モーラー」がナイフを片手に、「あらゆるものに親切に」と謳うヴィンテージTシャツ。

Jamie Allen(35)弁護士
「ボタンダウンシャツは〈ブルックス ブラザーズ〉、下着は真っ白な〈ヘインズ〉の白Tに限る」と語るジェイミーは住宅法を専門にする弁護士。この日は仕事帰りにクリーニングに出していたスーツやシャツをピックアップしに出かけていた。〈ヘインズ〉の白Tは5枚パックを毎月新調するのがルーティン。「仕事着のルールに関して世の中は緩くなってきてるけど、俺はビシッと決めたいんだ」

Evan Mock(27)俳優
友達とテイクアウトのランチを待っている俳優のエヴァン・モック。スケーターであり、現在はリブート版『ゴシップガール』に出演するなど俳優としても活躍する彼が着ているのは、もらいモノの〈Heaven by Marc Jacobs〉の一枚。「Tシャツ好きで、集めているけど、クローゼットにあるものはワントーンものが多くて。最近このブラウンとグリーンの攻めたカラーリングが気分でよく着てるんだ」