text: BRUTUS

BRUTUS.jpの連載『流行写真通信』でも昨年紹介した、ひとり写真家ユニット「System of Culture(システム・オブ・カルチャー)」が、初のメジャー・デビュー作品集『Pieces of Narratives』を刊行する。

「System of Culture」はSNSやAIの普及によって日々膨大な情報とイメージにさらされる現代社会の状況を、芸術表現の主題としてメタ的な視点から捉え、美術史との接続を意識しながら実験的な作品を制作。さらに写真の中に物語を構成する要素を潜ませつつ、AIによるモチーフやロケーションの選定を通じて、作家の意図を超えたイマジネーションの余白を生み出している。

初となるメジャー作品集『Pieces of Narratives』には、すべて新作が収められたことに加え、それらの作品に触発された3名の書き手──中野信子(脳科学者)、伊藤亜和(文筆家)、布施琳太郎(アーティスト)──によるオリジナルの短編小説を収録している。

『Pieces of Narratives』(ユナイテッドヴァガボンズ刊)/「System of Culture」の新作を31点と、その作品に触発されたオリジナルの短編小説作品3編を収録。定価7,700円。2025年11月末発売(※11月12日より〈MAHO KUBOTA GALLERY〉にて先行発売を予定)。

また写真集の発売に合わせて、東京・渋谷〈Maho Kubota Gallery〉では、個展『Exhibit 8 Pieces of Narratives』を2025年11月12日から12月27日まで開催する。

評論を寄せた一人、上海出身東京在住のキュレーターである金秋雨(キン・シュウウ)は、本書のなかで次のように記す。「System of Cultureの『Pieces of Narratives』において、写真はもはや情報を伝えたり、感情を喚起したり、物語の秩序を支えるために置かれてはいない。どの一枚も、最初から付け加えることも省くこともできる自立した小さな単位として在る。物語の重力から解き放たれ、どこか拒むような身振りで漂う」。

SNSをはじめとした膨大なイメージにさらされる私たちに、この作品集はどんな物語を想起させるのか(あるいは想起させないのか)。「見ること/見られること」の主従関係が転倒しつつある現代にこそ、“見させられたい”一冊だ。

BRUTUS
OFFICIAL SNS
ブルータス公式SNS

SPECIAL 特設サイト