英国製のワックスジャケット沼にハマった男が
幡ヶ谷に開いた古着店は聖地となるか
「もともと古着好きだったんですけど、〈リーバイス〉などのメジャーなものでなく、ニッチな個性的なものに惹かれる傾向はありました。ヴィンテージの〈バブアー〉との出合いは学生時代。
渋谷にある〈ブリティッシュ・イクイップメント・トレーディング〉でオーナーのマサキさんに薦められた1980年代の「ソルウェイジッパー」、90年代の「ノーザンブリア」というクラシックなフィールドジャケットにハートを射抜かれて(笑)。
貧乏学生だったけど、「もうこれはイギリスに行くしかない!」とお金を貯めて渡英したのが始まりです」。教職を志した時期もあったが、好きなことをやってみようと思い立ち、イギリスから仕入れたヴィンテージをもとに2017年からオンライン専門店をスタート。20年大磯に予約制の店舗を構え、昨年末、東京・幡ヶ谷に念願のショップをオープンさせた。
唯一無二のジャケットを探す楽しさを。
定番の「ビデイル」「ビューフォート」をはじめ、ロングコート、フーディーなど多様なモデルがずらり。季節によっても品揃えを変えている。「基本的にはイギリスから気に入ったものを仕入れています。〈バブアー〉のほかにライダースジャケットで有名な〈ベルスタッフ〉のワックスジャケットも。
「魅力はやっぱり経年変化による素材感。どんな風に着ていたか、使い方や扱い方で、ジャケットが唯一無二の顔を見せてくれる。一着ずつにキャラクターがあるんです。オイルが抜けた表情もいいし、メンテナンスやリプルーフ(オイルの塗り直し)をすれば、また新品に近いような雰囲気に蘇る。長く付き合っていけるのが一番ぐっと来るところかな」
幡ヶ谷に移転してから、大磯では遠くて来られなかったお客さんも駆けつける。接客は好き同士会話が弾んで1時間に及ぶことも。「ワックスジャケットは街着でもビジネスでもアウトドアまでカバーできる。スーツにもカジュアルにも馴染む懐が広いアイテム。
あれこれ悩むお客さんを見ているだけでも楽しいんです」。ちなみに山岸さんの今の気分はスウェットパンツ+革靴のコーディネート。
ヴィンテージという時代を超えるお宝。
ジャケットの価格は4万〜5万円が中心だが、中には滅多にお目にかかれないお宝アイテムも!その一部をご紹介。
1960’s 〈バブアー〉の「スリークォーターコート」
8オンスの生地で作られたドレス仕様のロングコート。近年は〈キャプテンサンシャイン〉がコラボで復刻させるなど、改めて注目度も高い。¥ASK
〈バブアー〉
「スリークォーターコート」には60年代モデルに見られる通称「黄タグ」が。ナイロンライニングで軽く作られているのも特徴。
1950’s 〈バブアー〉の「インターナショナルジャケット」
70年代までの全盛期にはイギリスのバイク乗りの7割が着用したと言われるライダースジャケットの代名詞。貴重なデッドストック。黒が多い中でオリーブはレア。¥250,000
1950’s 〈ベルスタッフ〉の「トライアルマスター」
1948年に登場し、チェ・ゲバラ、スティーブ・マックイーンらに愛されたライダースジャケットの名作。〈バブアー〉に比べると細身で男らしいシルエットが特徴。¥478,000
リプルーフでさらに愛着も深まります。
ワックスジャケットと長く付き合うためのメンテナンスも行っている。とのことで、10年ほど着用して油の抜けきった私物の「ビューフォート」をリプルーフしてもらった。見た目のきれいさだけでなく、防風&防水、耐久性も復活し、暖かさがまるで違ってくる。
価格はショートジャケットで9900円〜。期間は1ヵ月ほどかかるので、夏の間に出しておくのが賢いやり方。リプルーフのほか、リペア、袖や丈詰めなどのお直し、クリーニングなども可能。
HOW TO REPROOF