クラシックな町並みに、ニューショップが続々。三崎の古着店とセレクトショップを覗く

三崎の入り口こと〈本と屯〉からほど近い入船すずらん通りは、町中華や洋品店などが並ぶクラシックな商店街。その一角に気になるニューショップが並んでいる。いずれもアタシ社が運営する店だが、デザインやコンセプトはそれぞれ異なり、三崎の今を感じられる。

photo: Jun Nakagawa / text : Neo Iida

三崎の古着店とセレクトショップ

bOP

入船すずらん通りにある〈bOP〉は今年2月にオープンした古着店だ。営業は週末の土日のみ。シャッターを一部だけ開けたガレージのような店内には、ラックがふたつと手作り感のある木の什器、小さな一人がけソファが置いてあった。

店主の吉田峻さんは現在大学生で、平日は学校に通い、週末だけ店を開けている。〈本と屯〉のアルバイトをしていたとき、代表のミネシンゴさんから店を任されたという。

〈bOP〉店主の吉田峻さん
「リラックスしながらも、デザイン性や機能性も兼ね備えた服を紹介していきたいですね」と吉田さん。

「ミネさんと『三崎で古着屋さんができたらいいね』と話していたんです。僕がアパレルで販売員をしていた経験もあって、店長として、仕入れをはじめ業務全般を任せていただくことになりました」

小規模な店舗で、大量に古着を仕入れる必要がないため、細かくセレクトし、厳選した服だけを扱っている。店頭に並ぶのはヨーロッパのシェフジャケットやコーデュロイのショーツなど、メンズ・レディースを問わず、吉田さんがピンときた服ばかり。

「店名の〈bOP〉とはジャズの“be bop”から転じた“踊れる曲”という意味のスラングで、今の気分な、心躍るアイテムをセレクトするのがコンセプトです。個人的な趣味はアメカジよりユーロ。あと、デザインが面白い服が好きで、今シーズンはリネン素材で変わった形の服をいろいろ集めています。あと、三崎の男性って大体みんな大柄なんですよ。だから自然と大きめのサイズを揃えるようにしてますね」

古着だけでなく、オリジナルアイテムや、三浦出身の知人がつくるブランド〈feel かんじる/よい子のまち〉のアイテムも扱っている。

吉田さんは〈本と屯〉のバイトを始めてから三崎に通うようになり、今は店の2階を住居にしている。街の魅力をこう話す。

「都心から近いのにこんなに下町感のある港町って、そうない気がします。逗子や葉山みたいに資本が介入してないし、漁業があって、街が生活に根ざしている。小さなコミュニティだから自然と顔見知りになりますしね。人を感じるし、だから愛着が湧いてくるんだと思います」

雑貨屋HAPPENING

〈bOP〉の隣にある〈雑貨屋HAPPENING〉は、イベントスペースを備えたセレクトショップ。三崎の雑貨や食材をはじめ、全国のローカルなアイテムが揃う。壁には、イラストレーターunpisさんのグラフィックが一面に描かれていて圧巻だ。

雑貨屋〈HAPPENING〉店内
unpisさんのイラストは、すべて「ハプニング」をテーマに描かれているそう。蛍光灯も「HAPPEN」だ。
〈HAPPENING〉店長の矢口莉子さん
店長の矢口莉子さん。

店長を務める矢口莉子さんは、地元である東京の田原町と三崎の二拠点を行き来しているという。

「アタシ社では『TURNS』という移住マガジンの編集を手掛けているんですが、全国を飛び回るうちに地域ごとにいいアイテムと出合うんです。それで、三崎や全国のアイテムを集めたショップを作ることになりました。季節の三浦野菜を使った高梨農園さんのジャムやピクルスは、季節ごとで野菜が変わります。同梱のスパイスを使えば、三崎のお魚でスパイスカレーが作れる『MISAKI CURRY BOOK』は、当店のオリジナルアイテム。鎌倉三崎のお魚と一緒にスパイス商社〈アナン〉のメタ・バラッツさんと一緒に作りました」

元呉服屋の物件を改装した店内にはイベント用の小さなステージも。落語や大喜利、演劇、音楽ライブなど、様々なイベントを開催。“ヒト・モノ・コト”が集まる文化の発信基地でもある。さらに2階には泊まれるコワーキングスペースがあり、畳敷きの大きな部屋に男女別の風呂も用意している。今後はシルクスクリーンのワークショップも予定しているらしい。

雑貨屋HAPPENING_外観
どっしりと大きな建物。1階は全面ガラス張りだからunpisさんのイラストが特段目を引く。

遠い土地のフェアを行い、生産者や作り手にスポットを当てることで、ローカルの面白さがぐんと際立ってくる。三浦産のジャムやピクルスも輝いて見えた。「日常に小さな事件を。」というコンセプトのもと、様々なハプニングなアイテムを揃える〈雑貨屋HAPPENING〉。三崎を訪れたら覗いてみたい。